大義名分か
★★★★★
ゴードンの1965年作。幸せな一枚だ。この一枚聴くと強く思うが、彼のテナーはテナーそのものであり同時に革命でもあるなあ。
フレーズをメロディアスに繋げるわけだけど、中途半端じゃないところが妙だ。惜しまない。徹底して独創的に繋げる。
結局その差別感がないところが、非個性に見えながら愛すべきキャラクターになる。テナーは無駄にブロウしろ!っとか、テナー
は無駄に歌心に溢れてればいいとか、そんな差別的な概念を全部取っ払ってさ、彼は自分のテナーサウンドを創造したのさ。
考えてみれば、インプロヴィゼーションを放出すんのにはカリスマ性が必要だよ。誰もがそうしても個性がなくなるだけ。そんな
ことすんなら、こうしろ!ってとこに彼の大義名分を感じるし受け取れる。ああ、それにしてもこの一枚は心地よさって奴を超えて
さ、忘我の境地に入るね。これほどリラックスできる一枚も珍しいよね。ボサノヴァというハイブリッド進化系にゴードンという
ハイブリッド進化系が綯い交ぜになった時こうなる。
リラックスしたボサノバの快演
★★★★☆
素敵なジャケットだ。ブルーノートはいつも気の利いたデザインを見せてくれる。ジャズの魅力は内容に沿ったアルバムジャケットのデザインによっていっそうひきたつ。デクスター・ゴードンというテナーの巨人がボサノバを中心にリラックスした演奏を聞かせてくれる。決してトリッキーではなく、じっくりとフレーズを溜め込み、太く豊かな音色でブロウする様は、ジャズの究極的なダンディズムを感じる。黒いオルフェの無駄のない一音一音が、心に染みる。これほど堂々と吹かれると、ごまかしもハッタリもむなしく思える。バリー・ハリス、ビリー・ヒギンズ、ボビー・ハッチャーソンといったバックを勤める一流のサイドメンのサポートでセンスのよい演奏は、よりクオリティーを高めている。大人のジャズを地でいくアルバム、リラックスしたムードなのでBGMとしても楽しめる必携盤だ。