1960年代末のライ・クーダーは人気のセッションギタリストにすぎなかったかもしれない。けれども、キャリアの初期に彼をその身分から引き離したのは、彼の歌の中にある一風変わっているかもしれないが、非凡な味わいである。本作でクーダーはジョニー・キャッシュからバハマ出身のフォークの大御所ジョセフ・スペンスやレッドベリーまでさまざまなレパートリーを披露し、素晴らしい成果をあげている。クーダーのボーカルの技量はそのスライドギターやマンドリンの腕前に見合うものではない(「Hey Porter」「Billy the Kid」では見事なマンドリンの腕を聴かせてくれる)。だが、そのボーカルは親しみを感じさせ、たとえ「FDR in Trinidad」「Taxes on the Farmer Feeds Us All」のような古風で風変わりなナンバーに挑戦しようとも、派手に歌い上げるという誘惑に乗ってはいない。(Steve Stolder ,Amazon.com)