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ニューギニア軍医戦記―地獄の戦場を生きた一軍医の記録 (光人社NF文庫)

価格: ¥720
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光人社
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貴重なニューギニア東部の戦記 ★★★★★
全体で生き残り率は15対1。病院部で110名がニューギニアに上陸、内地帰還者15名、うち軍医は3名。患者輸送小隊はほぼ全滅。これだけでも非情な戦闘地だったことが分かる。著者は軍医志向のキャリアを経た陸軍軍医。

漁船が輸送に動員されたという話は他所にもあるが、本州からニューギニアまで5,000kmを船団を組んで到着し、漁民と漁船が全滅したとは熾烈。アイタペでの食人の記述もある。

元が「東部ニューギニア戦線」の題で書かれているためか医療事項はあまり量がない。
そのなかで下記のエピソードは興味を引く。

p.51 高村少佐の漂流による遭難対策の進歩。
p.60 救命胴衣のずりあがりによる頸部皮膚損傷を防ぐための紐の工夫。
p.61 毒芋「デンキ芋」
p.121 リケッチアによる「海岸熱」(ツツガムシ病そのもの??)
p.130 重傷者搬送のために患者満載の小舟艇7隻が海岸に集結した米軍の船の間をかいくぐって脱出。
p.142 蛆のわいている傷は比較的きれい(現代の医療でも利用が言われることあり)。
p.157 蛆はピンセットで引っ張っても取れないがクレゾールで落ちる。
p.230 マラリア剤プラスモヒン副作用の疝痛は待てば直る。
p.235 食べて死者が多数出た、蔓になる豆。

戦記に出てくる地名は変わっていることが多い。
特にニューギニアはネット上に現在の良い地図もなく、内陸部の話については記述地がどこなのか、書籍内の地図でも分からないで終わってしまった。
地図は一応添付されているのでばらばらにせず巻頭にまとめ、本文中にある地名を網羅するように編集して欲しいものだ。
将校目線の書 ★★★☆☆
著者が軍医少佐ということもあり、洗練された文面で書かれている。
そこがかえって私には読みづらく、前線兵士の回想記のようなリアル感を感じることができなかった。
出色の戦記 ★★★★★
数あるNF文庫の中でも、極めて優れた著作の一つであると思う。非凡な文才は、極限状況下における著者の心情への共感を沸々と喚起し、陸軍軍医少佐として戦場でこぶしを握る場面では、こちらも思わずこぶしを握り、傷病兵を励ます場面では、こちらも励ましの言葉が涙とともに口をつきそうになるほどだった。戦争が愚行であり撲滅すべき人間の宿痾であることは言をまたない。しかし、かつてそこには、紛れもなく人間の真実が在った。本書はそれを、一軍医の眼を通して、現在の明るみへともたらし、切々と訴えている。来るべき未来のために、人間として肝に銘ずべき一冊であると言っても過言ではないと思う。但し、この実録が、旧日本軍において、一定以上の地位に在った人のものであることには、留意する必要があるだろう。
読者を退屈させないストーリーの流れ ★★★★★
南方作戦の最前線にいた軍医大尉の著書なので誇張した部分もあるのだろうが読者は退屈せず一気に終わりまで読めると思う。

彼の上司の軍医大佐が『貴様、何をぐずぐずしていたんだ?労務者の一人や二人死んでも構わん。医局員はもっとやることがあるんだ!』と彼を叱責する場面は他の偉い将軍達の伝記には見られない現場の人を人とも思わない指揮官がちゃんと存在したことを後世に伝えています。この軍医大佐は陸軍でしたが海軍とてジェントルマンじゃなかったんだろうな。

戦争は普通の状態では隠された人間の素顔を見せつけてくれるのでしょう。

もうひとつ。この本にはニューギニアの詳細マップが絶対必要です。巻末に附けて欲しい。