「古い衣装」に込められた「新しい精神」
★★★★★
「短歌」「和歌」というと、曖昧模糊とした色彩で、浮世離れした貴族や
文人の繰り広げる一般人には無縁な世界と思われがちであるが、本書に
収録されている寺山の短歌はフランス象徴主義を彷彿とさせる強烈な
色彩感覚、かつ戦時中・終戦後の混乱期に少年時代を送った寺山の青春体験が
背景となっており、斉藤茂吉・釈迢空(折口信夫)の二大巨人亡き後の
歌壇を席巻したのもむべなるかなと思わされ、その背後にある原始仏教的な
汎神論的世界も含めて非常に味わい深い歌集である。
短歌好きもさることながら、普段象徴詩や現代詩に親しんでいる層こそ
必読と言えるだろう。