日本人に適した心理療法バックグラウンド
★★★★☆
仏教を単なる宗教としてでなく、人間の精神的安定を図るための普遍的な指針ととらえる。その試みは昭和初期の鈴木大拙の英語での「禅:ZEN」の紹介以来あるのだが、海外での仏教への高い評価と対照的に日本では宗教と切り離すことができない(ブッダの教えそのものよりも形式的な法事でしかかかわりがない)のか一般的でない。著者は精神科医出身でありながら花園大学社会福祉学部で仏教と心理学の深い接点を軸に教鞭をとる。日本の臨床心理学は舶来モノをありがたる国民性もあって、ユングやロジャースが中心的であるが、前者は元型や錬金術など日本人にはやや解りにくいし、後者は米国的プラグマテイズムのためかやや形式的である。間主観カウンセリングも求められる現代日本のカウンセラーにとってこれからはブッダの教えこそ原点になるのではないか。心理療法家にわかりやすく参照文献や基本的用語解説もあってうれしい。