1940年代の色あせない名作
★★★★★
国内で編纂された、20世紀SFアンソロジー 第1巻
現代でも色あせないていない1940年代の名作を読むことができる。国内にほとんど紹介されていないチャールズ・C・ハーネスを知ったのは収穫。全編水準が高いと思うが、特に面白かったのはアーサー・C・クラーク「時の矢」、C・L・ムーア「美女ありき」。
■「時の矢」
地質学者チームが5千万年前の古生物の発掘作業をおこなっていた。近隣の施設では、過去を見る研究が進んでいる様子。ふたりの若い地質学者は、この研究に期待をよせていたが・・・
■「美女ありき」
かつて全世界を魅了した女優ディアドリアが、火災で死亡してから一年。医師のアマルツァは、彼女を蘇らせることに成功する。それは、生前の彼女を完璧に再現する金属のかたまりであった ・・・
その作家陣は以下のとおり。
フレドリック・ブラウン/アイザック・アシモフ/レイ・ブラッドベリ/ロバート・A・ハインライン/ウィリアム・テン/A・E・ヴァン・ヴォークト/エドモンド・ハミルトン/シオドア・スタージョン
良作がいっぱい詰まった贅沢な一冊
★★★★★
有名なSF作家の隠れた良作(隠れてるかはよくわからないけど)を11編収録した贅沢な短編集。
アイザック・アシモフや、レイ・ブラッド・ベリ、アーサー・C・クラークなど、比較的有名なSF作家達の短編が一冊に詰まっているのでとっつきやすい。いろいろな作家が集まっているため読むのに時間はかかるが、一つ一つすばらしい作品なので読んでおいて損は無い。
個人的に好きな短編は「星ねずみ」「鎮魂歌」「昨日は月曜日だった」。星ねずみは御伽噺のようで面白い。しかも登場するねずみの名前がミッキーマウスなのだ。小説の中にミッキーマウスを持ってくるあたりがユーモラスで面白かった。鎮魂歌は宇宙への夢を持っている人なら誰でも楽しめると思う。命をかけてでも宇宙へ行きたいという気持ちは痛いほどよくわかる。ラストのシーンではなんともいえない物悲しさと老人の夢が叶ったことへの喜びを感じた。昨日は月曜日だったは奇妙な話で面白かった。奇妙な世界へ足を踏み入れてしまった主人公の困惑がとても面白い。これは普通にドラマにしたら面白そう。
11編あるうちに気に入るSFは必ずあると思うのでSF好きにはぜひともおすすめしたい一冊です。
宇宙に行ったねずみ
★★★★★
◆「星ねずみ」(フレドリック・ブラウン)
地球上の生物で、はじめて宇宙に出たねずみ、ミッキーの話。
中村融氏が〈現代のおどぎ話〉と評しているように、押し付けがましくない
寓話性があり、なおかつ、キャラクターすべてが愛らしい。
とくに、ミッキーや異星人たちが、ミッキーをロケットに乗せて打ち上げた大先生の
訛まるだしの口調で会話しているくだりには、なんだか幸せな気持ちにさせてもらいましたw
◆「美女ありき」(C・L・ムーア)
火事で体を失った舞姫が、サイボーグとして生まれ変わる話。
サイバネティクスがテーマであることから、当然「人間はどこまで機械か、
機械はどこまで人間か」という問題が提起されるわけですが、それ以上に、
希代の舞姫であったヒロインの人物像の掘り下げと、アイドルである彼女に
群がるメディアや観客との関係性といったものにスポットが当てられています。
彼女の精神的再生を、彼女のマネージャーである
男性の視点から描く、語りの技法も効果的です。
◆「昨日は月曜日だった」(シオドア・スタージョン)
昨日は月曜日だったはずなのに、目覚めると、
水曜日の朝になっていたという自動車工の話。
我々の現実はすべて芝居であり、舞台裏では小人たちが明日や明後日の
セットを作っていたというスタージョン一流の破格な奇想が展開されています。
主人公は「俳優くん」と呼ばれ、どうやらプロンプター(守護天使)の指示間違いで
月曜日の夜のセットから、未完成の水曜日の朝のセットに移動してしまったとのこと。
主人公はプロデューサーに会いに行き、元の場所に戻してもらおうとします。
ここでの「プロデューサー」というのは、きっと××のことなんでしょうね。
勉強になる
★★★★☆
充実した後書、読みやすくなった新訳、確かな選択眼、どれをとってもきわめて高水準のSFアンソロジーといえる。とてもオススメ。
遅ればせながら…
★★★★☆
表題作の「星ねずみ」は創元推理文庫版、サンリオ版、共に読んでいるが、今回の新訳が一番良いのではないだろうか?
原文はどうなっているのか知る由もないが、最後の一行で泣いたよ、私。