20世紀最大の革命であるボルシェビキ・ロシア革命の余波を受け、オデッサから逃げ出したギリシア人流民達の一行に、孤児エレニがいた。国を追われ、呆然と佇むしかない荒野にこぼした一粒の涙。それは、やがて大きな歴史のうねりとなって、彼女自身を更なる苦難の道へと続いていく。
見捨てた初老の元婚約相手の葬送、村人の怨念による大樹に吊るされた羊の骸、水没する村から逃げまどう群集。デジタルだアナログの次元の問題など意に介することなく、計算された完璧な構図と極限までにリリシズムを追求した圧倒的な映像と詩情をもって、20世紀前半の激動の時代をイメージ化し、観る者の感受性をあまねく揺さぶる。
170分、約3時間に及ぶ超大作。それに見合って余りある圧倒的な映像の説得力。巨大なテーマに小細工抜きに真正面から挑んだ、その勇気と力量。老いてなお盛んなる、飽くなき挑戦心。その姿勢こそが、アンゲロプロスを押しも押されぬ大監督へと仕立て上げたのである。
当初は20世紀全体を3部構成にして1本の長編とする構想だったが、描きたい内容が膨らみすぎたため、3本のそれぞれ独立した映画として製作されることになったらしい。本作はその1作目である。2作目、3作目が今から楽しみ。
気になったので調べてみると、主人公エレニを演じた女性は、アレクサンドラ・アイディニというギリシャの舞台女優でとのこと。映画初出演とは思えないくらい堂々と時代に翻弄された女を演じきった。