復帰後に吹き込んだ作品の中に,ちょっと有名な「インタープレイ」がある。本盤はその裏盤で,ズート・シムズにフィリー・ジョーという,意外な面々を迎えて制作されたオリジナル作品集。有名盤の陰に隠れて目立たないうえ,人選も風変わりなためか,あまり注目されることはないが,全曲オリジナルというのは,当時このアルバムだけであったことを考えると,実はこの作品が,ラファロの死を乗り越える上で極めて重要な作品だったことが分かる。
「タイム・リメンバード」を始め「ファンカレロ」「マイ・ベルズ」など,今日でも頻繁に演奏される演目が,皆ここからのものである点に注目して欲しい。また,標題「ルース・ブルース」が,さり気なく「カインド・オブ・ブルー」と韻を踏んでいることに注目して欲しい。そう,エヴァンスはマイルスとの競演の中から完成させたモード奏法を拠り所にして,ラファロの死を乗り越えようとしたのだ。実際,ラファロ時代のエヴァンスと,これ以降のエヴァンスの奏法の間に横たわる落差の要因は,モード概念の扱いに他ならないのである。
陽の「インタープレイ」に対して、本作は陰、か。無論、単に陰気と言う訳ではなく、一人でじっくり聴く分にはコッチの方が噛み応えがあるかも。
私個人の愛聴度は、こっちの方が格段に上。あまり人に教えたくない隠れ名盤!