国際政治理論の入門書
★★★★☆
(アメリカの)国際政治学には、少なくとも主流と呼べる3つの理論が存在する。それらは現実主義、多元主義、そしてグローバリズムである(構成主義は理論というよりもアプローチである)。本書は、こうした主要理論をそれぞれ概観的に述べることによって、3つの理論の特徴・思想的系譜・問題点・見方・基本的前提を明らかにするものである。
個人的には、初学者にも進められる「入門書」として同書を捉えている。文章も平易で理解し易く、何よりもそれぞれの理論を論じた章が、同じ基準(例えば、変化やシステムに対する認識等)によって書かれているため、3つの理論の違いが明確に捉えられる点は、とても参考になった。
しかし国際政治学には、同書によって取り上げられた3つの理論以外の有力な見方(例えば批判理論等)やアプローチ(例えば構成主義等)が存在する。そのため、吉川直人他編『国際関係理論』(勁草書房、2006年)や、進藤栄一『現代国際関係学―歴史・思想・理論』(有斐閣、2001年)と共に同書を読み進めると、一層、国際政治理論について理解が深まるといえるだろう。
国際関係論の基礎知識
★★★★★
本書は、国際関係論のイメージをつかむために必須である、さまざまな理論を概観する内容となっている。現代の国際社会は、現実主義から多元主義(自由主義)、グローバリズムへと変遷しているととらえられ、それぞれの考え方の特徴(分析主体や行動様態、問題領域など)が述べられている。その理論を代表する研究者と考え方が紹介され、それに対する批判理論も挙げられている。難点は、初学者にとってはそれが一般論であるのか、又は著者の意見であるのか区別がつきにくい個所があることである。広い領域を扱っているため、関心のある領域にはもの足りなさが残るかも知れないが、国際関係論の大きな流れをみるため、また必要な用語を押えておくために、複数の本と合わせて参考書として使うことをお勧めしたい。