アカデミー賞で『ボウリング・フォー・コロンバイン』が受賞したときのスピーチそのままに、マイケル・ムーア監督がブッシュ大統領を徹底批判するドキュメンタリー。ブッシュが大統領に当選した際のフロリダでの選挙疑惑や、同時多発テロ前後の彼の行動、ブッシュ家とビンラディン一族の意外なつながりなど、経歴や言動から大統領としての資質を問い正す。
全体を貫くテーマは、あくまでムーア監督の私見だが、使われている映像素材はすべて事実であり、その構成があまりに巧み。本質はどうであれ、観客にはブッシュのダメさ加減がはっきりと伝わり、ある種、痛快でもある。ムーアがもっとも時間を費やすのが、イラク戦争の是非。イラクからの帰還兵を連れて得意の突撃取材も行うが、息子をイラクで亡くした母の悲痛な叫びが、本作のクライマックスだろう。彼女を通してムーアは、ブッシュを批判するというより、無意味な戦争に反対しない社会全体を痛烈に批判する。小手先のうまさもあるが、鋭く強いメッセージを持っているという点で、これは超一級のドキュメンタリーなのである。(斉藤博昭)
マイケルムーアからの批判
★★★★★
マイケルムーアが言っているように、もちろんこの映画はただブッシュを批判するために作られたのではない。イラク戦争で浮き彫りになった、もっと大きな問題を提示し、アメリカという国を、強いては全世界を(もちろんマイケルムーア自身を含めて)批判しているのである。
批判とは相手をけなすことではない。それは互いの欠点を示し、高め合う、崇高な行いだ。人間が不完全な存在で、様々な問題を忘れる限り、批判はつねに誰か他者の手によってされなければならない。
確かにそれは、勇気のいる行為であるし、圧力がかかり(実際マイケルムーアは新作キャピタリズムが最後の映画になるかも知れないと言っているように資金源をほとんど断たれてしまっている)ほとんど得をしない。けれど、必ず誰かがやらなければならないのだ。
そうしなければ、問題はつねに忘れられ、間違い、騙され、ついには悲しみが感染していくだけなのだ。
付記。最後にマイケルムーアの言葉を添えておく。
「僕は国民を怒らせているわけじゃない。国民はもうすでに怒っているのだから」
振り返ってみよう
★★★★☆
オバマ新大統領の誕生に、なぜアメリカ国民があれほど熱狂したか。
そもそもブッシュ大統領の就任に、どれほどの疑惑があったのか。
米国史上最悪の大統領と称されたジョージ・W・ブッシュは何をしたのか。
その理由を手っ取り早く理解するには、この作品を観るのがお薦めです。
内容は9.11アメリカ同時多発テロを中心としたドキュメンタリー映画ですが、
日本のメディアだけでは知りえない事ばかりです。
今なお続くアメリカの軍事行使。
その一端を教えてくれる作品です。
あなたはどう思いますか・・
★★★★★
この映画は前評判も高く有名だった。
ただその中身は、単にブッシュを茶化して
おどけに仕立て上げるだけのものだと・・・
ずっーと思っていた。
けれど・・
映画は、ふざけたものではなく、
彼の主張を貫いたものだった。
この映画は、一映画監督の目からみたアメリカという現実を映し出したものだが、虚構のアメリカと実際のアメリカの姿を対比させて見せている点が素晴らしいと思った。
内容については、人それぞれの判断ではあろうが
私個人の意見として、いままでのブッシュの言動とその政治姿勢。
実際に行われた結果。
そして、「あれほどフセインの恐ろしさ、核の恐ろしさを自信を持って言っていたのに、結果的には何もなかったと認めたこと」
・・・ じゃー 戦った人たちはなんだったんだぁ。
巻き込まれた民間人は。 そして世界の国々・アメリカの市民。
それでものうのうと、しゃーしゃーとしている鉄面皮。
それを考えるにつけ、もっと世論を高めていくべき。
そのためには、事実をしっかり見据えた映画をどんどん作るべき。。 そう思いました。
日本人には平衡感覚があります。
どちらかの主張に傾くことに抵抗感があり、
実際にどちらかに完全に賛成することはまれでしょう。
傾くことに不安や、恐怖を覚えることさえあります。
あなたは、この映画を見て 実際のところどう思いますか・・
偏見に満ちているが価値ある作品
★★★☆☆
ブッシュ嫌いのムーア監督がブッシュ大統領をこきおろしたフィルムである。一種のドキュメンタリーであるが、ムーアのお気に入りの部分だけをつぎはぎしている。その意味ではウソで固めてある、と言ってもいい。このフィルムの主張を鵜呑みにするのは、ブッシュの言葉を無条件に信用するのとおなじく危ないことだ。
ただし、わたしは、ムーア監督の権力に対する姿勢は支持したい。偏見やこのような人は有用だ。さらに、こんな映画を作ることが出来てヒットするのは、やはりアメリカならではのシステムだ。日本でだったら生きていけないだろう。銃弾をぶちこまれるかもしれない。
ブッシュやチェイニーが石油利権と親密なことはよく知られている。一国の指導者は自分は安全な場所にいて国民を戦争にかりたてること、顔も知らない国民のことなど親身に考えることはない等々も同じくである。
プロパガンダ。しかし、必見。
★★★★★
本作は、「ボーリング・フォー・コロンバイン」で銃社会アメリカの暗部を告発し、
喝采を浴びたマイケル・ムーア監督の2004年作品です。
常に念頭に置くべきなのは、本作の大きな目的が、
当時の米大統領選挙におけるブッシュの再選を阻止することにあったということです。
2000年の大統領選挙におけるゴア候補の敗北を嘆くことに始まり、
終始ブッシュをマヌケに描き続ける(実際マヌケとしか思えませんが…)ことから、
その狙いは明白ですが、周知のとおり、ブッシュは再選されます…。
しかし、そのようなプロパガンダ性にもかかわらず、
本作は、アメリカ社会にどうしようもなく広がる矛盾を抉り出している点で、
「ボウリング〜」同様、必見の作品といえます。
ひとことで言えば、「腐敗した政治が維持し続ける格差社会」であると考えます。
見ていて辛いのは、登場する我々と等身大の人々の発言の、ベクトルがばらばらであること。
アメリカ人とイラク人との間の憎悪の連鎖は言うに及ばず、
アメリカ人同士、米軍兵士同士でも、お互いにまったく理解し合えていない…。
そして、それをまとめるべき政治の機能不全のひどいこと!
忘れてはならないのは、我が国はそんなアメリカに盲従しているということ。
政治家は当然、官僚もせっせとアメリカのシステムの模倣に努めている昨今、
私たちの将来が、ここに映し出されているのかもしれません…。