大正・昭和初期の陰
★★★★☆
明治以降の日本の短篇怪奇小説を、全3巻で構成したアンソロジー。
2巻には、昭和10~36年の16篇が収録されている。幸田露伴、三島由紀夫、遠藤周作など純文学者の小品と、横溝正史、山田風太郎、久生十蘭などの作品が混在した一冊。
日本の怪奇小説がひとつの完成に達した時期であろうと思う。西洋の怪奇小説を消化吸収して、日本的などろどろした世界がつくり上げられている。肉が溶けていくような気持ち悪さ、触感に訴えてくる嫌らしさがあらわれている。キングやクーンツのモダンホラーを先取りしたような「恐さ」だ。
ただ、1巻に比べると小粒になったような印象もある。