未知は未知のままに
★★★★★
レムの作品をある程度読んでいる人なら、迷わず買うべきです。文学エッセイと言いつつ、これもれっきとしたSFだと思いました。
彼の作品で、所謂3部作と呼ばれる「エデン」「ソラリス」「無敵」を発表年代順に読めば明らかなように、「未知」に対しての人間の存在、というか有り様について、レムが一種の回答を持ってそれぞれの作品に取り組んでいたことが、そのままそれぞれの作品のテーマとなっているのですが、本書を読んで新たにそのテーマの真髄が確認できます。その昔、多くのSF作家の構成主義的作品を強く非難していたことや、ディックと喧嘩したことなど、レムには逸話も多いですが、ここまで一貫している作家は他にいないかもしれません。
先日読売新聞に掲載されていた沼野氏による作品紹介も、非常に興味深い記事でした。多くの人がこの作品を手に取ることを期待させます。
サンリオ文庫なき今となっては、レム作品に限らず、国書刊行会には大いに期待するところですが、「マゼラン星雲」は…やっぱり一生読めないのかなぁ。