ジャケットを戻したなら、収録曲も戻そうよ〜
★★★★☆
よく知られた話だが、「売れそうな曲がない」という理由で、完成したアルバムから4曲も差替えを命じられたばかりか、ジャケットまでダメだしをくらった、不幸なアルバム。それにしても元ビートルのスーパースターに対して、この仕打ち!レコード会社ってのは、そんなに偉いのかね?
というわけで、(1)(4)(6)(7)が差替え曲なわけだが、(6)(7)など、これ見よがしの、過剰に煌びやかなサウンドを纏っているが、ジョージの意外なポップセンスが垣間見え、実は決して出来は悪くない。この期に及んで、差替えを要求したレコード会社を皮肉った曲に仕立てた、らしい(1)も、スカを取り入れた意欲作だしね。それ以外もジョージにしか書けないバラッド(3)をはじめ、よく練りこめられた佳作が揃う、なかなかの意欲作だよね。その(3)こそ、ジョージ・ファンには堪らないが、一般的には差し替えを要求されてもおかしくない、キャッチャーとは無縁の曲なんだけど、レコード会社も実は結構わかっていたのかなぁ…。
とはいえ、そんな経緯も手伝って、「33・1/3」「慈愛の輝き」なんかと比べると、やはり統一感のない、とっちらかった印象のアルバムだよね。お蔵入り曲なんか聴くと、当初のジョージが描いていた世界観が一層クリアになってくるんだよね。だからこそ、ジャケットを戻したなら、収録曲や曲順も戻さなきゃ、やはりダメだよね!この中途半端な仕様はまったくいただけない。この曲順なら、ジャケットも変えちゃダメだよ。
★個人的には故人の意向を無視したリミックスは反対だが、リマスターは大賛成。だって、一般人の再生環境なんて千差万別なんだからさ、本人が意図した通りの音を聴ける人なんてほんの一握りじゃね?ビートルズのファンって、ちょっと頑なな人多い気がする。音がクリアな方がいいじゃん!
1980年12月8日
★★★★★
ジョンが暗殺された。当時レコード(!)雑誌を毎月買っていてソロ・アーティストとなっていたジョンとジョージがほとんど同じタイミングでアルバムを出すことを知っていた。少しもったいない気がしたのをおぼろげに思い出す。
現在、復刻されたこのアルバムはジョンが暗殺される前に雑誌の宣伝等に掲載されていたオリジナルのジャケットに差し替えられている。
ジョンの死を発売直前に知ったジョージは一時仕事が手につかなかったそうだが、電光石火のタイミングでジョンの追悼曲「過ぎ去りし日々」(ポール・リンゴ参加)を挿入し、久々のビッグヒットを飛ばす。ビルボード2位だったと思う。ジョンの死後発売されたこのアルバムのジャケットは、レンガの壁をバックにジョージが微笑むカラー写真に差し替えられていた。ちなみに、このジャケット写真のアルバムは、今でもヤフオクなどでたまに出品されている。
このアルバムの2年後、「Gone Troppo」を発表する。が、(嫌な言い方だが)ジョンの死をネタにビッグヒットを出した自分に嫌気がさしたのか、といぶかるほど全く宣伝活動をしなかったせいで、ビルボードチャートの120位程度までしか上昇しなかったように記憶している。
ジョンの死を境に中学生から高校生になっていた自分にとって、ダブルファンタジーから、Gone Troppoまでの各アルバムは、思春期の思い出がオーバーラップする貴重なものとなっている。売れたかどうかに関わらず、みな素晴らしい曲ばかりである。
どうせなら差し替え曲をボーナストラックにして欲しかった
★★★☆☆
"Somewhere in England"が当時のDark Horseレーベルの所属元,Warner Brothersからの圧力でGeorgeの意図を反映しないかたちで,ジャケット,曲を差し替えて発表されたことはよく知られた事実である(Johnの死と言うアクシデントもあったが...)。今回のジャケットは,その差し替えられたオリジナル・バージョンのものであるが,どうせなら,差し替えられた曲をボーナス・トラックとして収録するのが本来あるべき再発の姿ではないだろうか。アルバムとしての出来が悪くないだけに,少々残念。尚,プロモ盤のみで流通した本来の"Somewhere in England"のLP収録曲は次のとおり:
1. Tears of the Wall
2. Hong Kong Blues
3. Unconsciousness Rules
4. Save the World
5. Baltimore Oriole
6. Life Itself
7. Sat Singing
8. Lay His Head
9. Writings's on the Wall
10. Flying Hour
All Those Years Ago
★★★★☆
製作の過程はとくわからないのだけれど、この製作中にジョンの暗殺があった。そういう中で、すばやく動いたジョージは、このアルバム全体の統一性を捨ててまで、ジョンにささげたのだろうと思う。
All Those Years Agoは、このアルバムの中で「浮いている」。
しかし、弟分としてジョンにまとわりついていた頃のことからジョンからひとり立ちしていくところまでを1曲にこめたのは、すごいと思う。
毎度のことだけれども、デジタル=レマスタリングという名の改編は止めてもらいたい。オリジナルをい聞かせて欲しい。
all those years ago
★★★★☆
「差し替え」エピソードのせいで「ジョージの意思が歪められた」としてマイナスイメージが付きまとう作品ではあるが、よく聴くと名曲ぞろいのアルバムだ。差し替え前の曲は確かに良いが(特にsat singingはいかにも彼らしい、メランコリックでかつ温かみのあるメロディーが光る佳作)、差し替え後の曲の出来も素晴らしく、ジョージの代表作のひとつとしてもおかしくないクオリティは備えている。いつも通りの落ち着いた甘いメロディーとヴォーカル、それにレイ・クーパーらのバックによるポップな味付け加減が絶妙である。特に「life itself」はインド風の音階に乗ったスライドギターにレイのきらびやかなパーカッションが絡み合う、ジョージにしかつくり出せない名曲だ。
唯一惜しまれるのは、ジョンに捧げた叙情的な「all those years ago」が、ここでは本作のトータル性を落とす効果を出してしまっている点だ。確かにこの曲は名曲だが、リラックスしたポップソングが並ぶ本作には収録すべきではなかった。試しにこの曲を飛ばして全曲聴いてみるといい。全く印象の異なるアルバムとなる。
全体として、まとまりに欠けるアルバムとなってしまった点は否めないが、各曲の出来はいいので、あまり好印象を持っていない人もじっくり聴いてほしい作品だ。