ここにも高度成長の吹き溜まり
★★★★☆
佐伯さんとはほぼ同年齢です。
私たちが生まれた時にはもう水俣病の発生が確認されていましたし、小・中学生時代には「公害」の文字が踊っていました。
義憤をまくしたてるのではなく、アスベスト禍の被害者として、そして小説家としてつづる抑えの利いたノンフィクションです。
本書にも出てくるように「三丁目の夕日」の懐かしさの裏にある、信じがたい傲慢さと無知から引き起こされた信じがたい事実を知らされます。
儲けや手間といった自分たちの都合を下請けの現場の職人が背負い込ませる理不尽さ、泉南地区の石綿工場の歴史の中にみられる差別の構図など、テレビ・新聞だけでは知り得ない、アスベストから見た近代史・戦後史の現実を教えてくれる。