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鉄塔家族 上 (朝日文庫 さ 32-2)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 朝日新聞社
Amazon.co.jpで確認
タイトルが失敗 ★★★★★
鉄塔家族というタイトルに購入するのが遅れた一冊です。
何かひょうきんな内容を想像してしまい、アマゾンで単行本として辛うじて在庫があった一冊を購入して読みました。
ノルゲもそうでしたが、実に丁寧に生活を書き起こしています。
ノルゲはある意味非日常でしたが、本書は日常の中の心情を細やかに一年ほど書き送ります。
人それぞれが表現力さえあれば、小説家になれる人生を送っていることが感じられます。
WEBの適当な地図サイトで本作の舞台となった大年寺山を眺めながら読み進めると、地元出身の部下曰く「子どもの頃サバゲイで遊んだり、部活で階段を上り下りしたけど、見るところなんて無いですよ。」との事だが、是非訪れてみたいと思うほど魅力的な風景を醸し出してくれます。
虚実織り交ぜての作品でしょうが、初期のストレートな私小説とは違ったよく昇華された作品です。
文庫版の表紙はあの柳の木をモチーフにしているのでしょうか。
小説に明確な寓話性や起承転結を求めないならば、本作はファンのみならずお薦めできる作品です。
心洗われる素晴らしい作品 ★★★★★
古い鉄塔がデジタル化の波によって、新しい鉄塔に置き換わってゆく一年間が描かれてゆきます。その鉄塔のある風景は、その周りの自然(植物、動物、鳥)の一年間でもあり、更には、鉄塔の周りに住む人々の一年間の風景でもあります。
そして、鉄塔の周りに集まる人々は、そこにある自然と共に生きる「家族」でもあるようです。
序盤は、そうした「家族」たちの一人一人を丁寧に淡々と描いて行きます。その中でも、自然の描写は、実に生き生きとしており、作者の並々ならぬ愛情が感ぜられます。
後半に入ると、そうした「家族」も、鉄塔を取り巻く人間関係だけで生きているのではないということを、いやというほど感じさせられます。主人公の息子の家出の問題が、その最も大きな出来事ですが、それに対する主人公夫婦の対応は、世間の常識に捕らわれないナチュラルなものでした。そこで、私たちはほっとさせられます。でも、実際の自分を襲ったら、とてもそんな対応は出来ないだろうなと思います。
そして、新たな鉄塔の下に、「家族」たちの団欒がやってきます。それは、新たな春を迎えるものであり、新たな「家族」の出発でもあるのでしょう。
この本を読んでゆくと、日頃の雑事があほらしくなります。もっと、自然に生きられないものなのかと思ってしまいます。
心洗われる素晴らしい作品でした。