一つ、選曲の美しさ。選曲に関して目を引くのは、5曲中3曲を占めるフレディ自身のオリジナルである。彼の代表作である「バードライク」や「クライシス」の初演が収めてあるし、他にもバラード、ショーターのオリジナルと佳曲ぞろいである。
二つ、フレディをはじめとしたプレイヤーの好調なソロ。本作品が録音された61年には、フレディのモード奏法にも磨きがかかり、恐ろしいまでの流暢なソロ・ワークを展開している。
そして三つめは彼本人も曰く、人選にある。ベースのアート・デイヴィスはコルトレーンと共演したことのある実力派だし、マッコイ、エルヴィンはコルトレーンのクァルテットを抜けたばかりで、才気煥発ぶりをいかんなく発揮している。フロントを固めるのはフレディの他にショーターとバーナード・マッキニーであるが、ここで特筆すべきはマッキニーの操るユーフォニウムという楽器についてであろう。
現在では殆ど吹奏楽でしか使用されなくなったこの楽器は、小型のチューバのような形状をしている。通常3管で用いられるトロンボーンに比べて管が太いので、暖かく美しい音色を出すことができる。本セッションにおいてはその深みのある音色を生かした重厚なアンサンブルが楽しめる。
とにかく、本作品の魅力はいくら書いても書き足りないので、このアルバムを買って実際に聞いて感じてください。