父親の世代が夢中になったのがよくわかる
★★★★★
このシリーズが世に出たのは、私の父が働き盛りの頃。
市川雷蔵のファンでもあり、特に眠狂四郎の映画の大ファンであった父親の影響で、
私個人は眠狂四郎を知ったのであるが、
映画もよいが、原作もいい。
娯楽の少なかった時代、このシリーズにみんなが熱狂したのはよくわかる。
文体が今風でないため、最初はちょっと読みにくいという印象を受けたが、
それもすぐに気にならなくなった。
解説を遠藤周作が書いているという点も注目。
映像化向け
★★★☆☆
これまで眠狂四郎を題材にした映画・ドラマの類を見たことがなく、はじめて本書を読みました。
それなりに面白いとは思いますが、ありがちなストーリーで途中で展開が読めてしまうのがいかにもという印象です。
女性や敵味方が主人公に対して都合良く動いているのも見え透いている感があります。
面白いのは眠狂四郎の設定や性格にあると思うのですが、小説ではなんだか鼻についてしまい、あまり魅力的には感じられなかったです。
キャラクター次第な内容なので、映画やドラマのほうが面白いでしょうね。
2010年にはGACKTで舞台化・・・
★★★★★
されるというシリーズ。制作発表記者会見では、自身もこの本を読み、まるで僕のためにある
役だと思った、とコメントしている。なるほど、それは全く買い被りではなかった。
私は、最初から「眠」にGACKTをピタリと重ねて読んだ。そして、それは最後までぶれる
ことはなかった。そのふるまいの一つ一つや台詞まで、まるでGACKTという「素材」に
ピタリと見事にはまった。
もともとは、週刊誌に連載されていた小説だという。それゆえ一話読み切りの短いストーリー
が輪のようにつながって物語が展開してゆくので、とても読みやすい。
やや時代を感じさせる文体であるが少しも気にならず、その描写の巧みさや面白さで夢中に
なって読んだ。50年以上経てもなお魅力的な小説の力を思った。
さて、どの話が舞台化されるかという楽しみもある。この分では、一気に6巻まで読むだろう。
GACKTの舞台を楽しみにするファンにはお勧めである。
色気のある文章
★★★★★
文書がとにかく色っぽい!
1つの大きな話の流れの中で眠狂四郎がいろんな事件を解決していくスタイルで飽きさせない。狂四郎の虚無感がただのキャラづけじゃなくて説得力がある。
なので時々やる気を見せてくれると楽しくなっちゃう。
時代を超えなかった時代劇ヒーロー
★★★☆☆
『大菩薩峠』の名キャラ・机竜之介がインスピレーションとなった剣士物はいくつかあるが、これもそのひとつらしい。
時代劇の古典を読むつもりで手に取ったが、なかなかツライものがあった。
眠狂四郎がカッコ悪いのだ(涙)。ナルシシズムやら自己憐憫、その裏返しの優越感が分かりやすく滲み出ている。彼の自意識過剰や自己ドラマ化の様子など途中で笑い出してしまった。なんか少女漫画の主人公みたいだなぁ。
加えて眠狂四郎一人がまかり通る世界観の中で、彼を取り巻く人々はみなさん眠狂四郎の大ファンである。オンナはみんな彼に惚れる。机竜之介はオンナに惚れられてもボーっとして気付かなかったりする上品な殺人鬼だったが、眠狂四郎はその手のサインに目ざとく(←「目ざとい」ってのが下品)、すぐにオンナの上に乗っかる。
私には、このヒーローは「自分は特別不幸で、特別な運命を持っていると思っている結構フツーの人」に思える。別に普通であること自体悪くはないが、「これが『カッコイイ剣士』で通った時代っていったい??」と社会学的な興味まで湧いてきた。
ともあれ、ハードボイルドとは対極にある世界である。男の本質はハードボイルドよりむしろ少女漫画の方に近いのかな、などと思ってしまひました。
小説だけなら星二つだが、柴田錬三郎氏に敬意を表して星1つ追加で。