非常に詳細に広範囲に取材していて驚く
★★★★★
オリジナルは2009年リリース。邦訳は2009年8月20日、ハヤカワ新書『juice』シリーズの5巻目としてリリースされている。このハヤカワ新書シリーズは傑作揃いで、全部読破したくなってしまう。
読後まず驚くのはその広範囲かつ正確な取材である。まさにウィキペディアの生い立ちに始まり、多言語化などの歴史的なプロセスを実に『中立的に』正確に伝えきっている。そこにまさにウィキペディアンたちの熱意の一端を見る感じだ。クリス・アンダーソンの『フリー』に詳細に説明されているが、この『フリー』の実験として最大規模のものはこのウィキペディアなのは間違いないところだろう。ここにはハッカーたちの『騎士道』を感じる。プログラマは続々と自らの化身たるプログラムを解放する。昔々、アキバにはMacのショップがあって、そこでPDSがもの凄くたくさん入ったSE30かなんかが置いてあって、順番待ちでフロッピーにコピーしたことなんて思い出してしまった。
一方、日本人ウィキペディアン参加者が、『ジミー・ウェールズって誰ですか?』って答えた有名なシーンも登場、日本人らしい。
その存在の偉大さだけでなく、人間という動物の不思議さも感じるウィキペディア。それを正確に綴った名著だ。
丸ごと1冊ウィキペディアの本。もう少しコンパクトでも良いかも。
★★★★☆
ウィキペディアというサービス、企業について書かれた本。ウィキペディアという名前は勿論知っているし、使ったこともある。当然、どういう会社かという話もちらほらとは聞いてもいた。しかし、それらから受ける印象と、この本を読んで感じた印象とでは大分違う。もっと順風満帆かと思っていたら、かなり大きなトラブルに何度も見舞われているし、ある意味では人間的というか、ぐちゃぐちゃとしているという印象を受けた。
ウィキペディアの、ある意味では、内部に近いところにいる人間が書いた本なので、その成り立ち、歴史を知る、もしくはそれらを参考に起業しようと考えている人には、本書は有益かもしれないが、全体としては、冗長に感じる。1冊丸ごと一つの企業の話、ましてウィキペディアという決して長い歴史を持っているわけでもない企業の話なので、割と小さな事件というか出来事にもページを割いている。つまり、創業当時に関わっているなど、中心的な人物のエピソードがあるというのは、ある意味では自然だと思うが、ある一時期に関わった、世間的には全く無名の人物の名前(あるいはハンドルネーム)がいくつも出てくるというのは、正直、あまり興味がないというか退屈に感じる。
折角ウィキペディアという、旬なテーマを扱っているのだから、もっと的を絞った、凝縮された文章で読みたかった。そういう意味では、同じくハヤカワ新書juiceのジェフ・ハウの『クラウドソーシング みんなのパワーが世界を動かす』あたりは違った種類の色々なサービスについて書いているという点において、退屈せず興味深く読めた。この新書juiceは良い本に当たれば、非常に充実した読書になるし、はずれを引くと結構苦痛になるように思う。まあ、他の新書に比べればはずれは少ないように思うが。
ネットの南北問題
★★★★★
WIKIは多くの人が知識を共有するのに便利。
昔のBBS当時から、掲示板型の書き込みには、「荒らし」はつきもの。
ただし、
トロール
ソックパペット
2つの概念ははじめて知りました。
また、WIKIの現状としては、言語話者数と記事数の比較で少ないのは、アジアとのこと。ネットにおける南北問題は解決していあいようだ。
ウィキペディアの歴史が分かった
★★★★★
誰もが編集可能な百科事典。そんなものが信頼に足るものなのか。ネイチャー誌がブリタニカと遜色ないなどと評価しているほど充実しているという。はたして、このネット上の善意の集まりがこれほど人々をひきつける理由はなんだったのか。制限をかけないことが急成長した理由。しかし、英語、独語のWikipediaはすでに充実期を迎え、ある種の制限をかけ運営してゆく方向性だ。
まったくのボランティアで支えられてきた組織も、運営費が嵩み費用をどのように捻出してゆくか課題となってきた。収益を上げるための提案をしただけでスペイン語ウィキペディアが分離した過去もあり難しい問題だ。
技術的な歴史、組織の難しさ、荒らし対策、管理や権限とさまざまな問題を網羅した本書はWikipediaの短期発展のすべてを解説してくれる良書だ。
(Wikimedia Conference Japan 2009にて本書の翻訳者、千葉敏生氏の講演があった。シャイな若者で、ハヤカワの編集者が進行役で行われた講演会だったが、ほとんどこの編集者が話していた感がある。)
ウィキのウィキたる由縁
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辞書を引かなくなりました。
語弊のある言い方をすると、ウィキペディアを初めとする、web辞典のせいです。
人のせいにしているだけですが、、、
世の中はいそがしく、知らないことよりというとバカにされ、昨日覚えた半可な知識で今日プレゼンしなければいけません。
ウィキの即応性は、時代の要請といえるかもしれません。
さらに、ウィキのレボリューションは、辞書にはのらなず消えていくはず言葉や、たしかめることが容易でないこと、を載せていることもあげられます。
たとえば、”スイーツ(笑)”で検索をかけたところ、見事にヒット。
しかも、”現在、削除の方針に従って、この項目の一部の版または全体を削除することが審議されています”だったり、
”この項目は著作権侵害が指摘され、現在審議中です”だったりで、この文章を書くためにあるようなページでした。
マジなんですよね。あのブリタニカでも、ウィキの編集方針の一部を取り入れることにしたそうです。
手になじんだ紙の辞書(われながらすさまじい表現です。紙の!)は、かけがいのないものです。
ただこれから、ウィキは、もっと当たり前になっていきます。
この本は、ウィキのその骨組みを知りたいと思ったとき、最適の案内となるでしょう。