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嵯峨野明月記 (中公文庫)

価格: ¥780
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論社
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芸術家達の戦国時代 ★★★★★


私の知っている戦国時代の物語というと、その主人公は戦国武将やその家臣達であり
ほぼ武家の視点で描かれているものばかりでした。

この小説は、その戦国時代に生きた三人の芸術家達の物語であり、信長暗殺や関ヶ原の合戦といった
歴史上の大事とも少し距離を置いて話しは進んでいきます。

ここに登場する三人の主人公は、もちろん政治の影響を受けながらも、独自の芸術を極めたいという
強い思いと実行力を持ち、それぞれの人生を歩みます。
その人生が「嵯峨本」という点で交差しながらも、また別の方向へ向かっていく。
そのようにして戦国時代から江戸時代への時が、立体的に描き出されていきます。

人生を達観したかのような本阿弥光悦、情熱の天才絵師俵屋宗達、実業と芸術を揺れ動く角倉素庵
それぞれ全く違う人生を歩みながらも、創作への強い思いがビシビシと伝わってきます。
特に、私にはまさに天才として描かれる俵屋宗達の熱い思いに心臓がドキドキしました。

辻邦生氏の作品は、「春の戴冠」「安土往還記」「西行花伝」に続いて四作品目でしたが、
今の私にとっては、一番心に響いた作品でした。
美とは何か ★★★★★
慶長から元和年間に京都嵯峨で出版された豪華版シリーズ「嵯峨本」。当時の古典文学を出版したものですが、この「嵯峨本」をめぐって織りなされる物語。豊臣政権から徳川政権への歴史の転換期に、本阿弥光悦・俵谷宗達・角倉素庵の3人が登場します。「美とは何か」をめぐって、考えさせられる一冊です。
言葉で紡ぎ上げられた美術品のような・・・ ★★★★☆
世にも美しい豪華本の誕生に携わった3人の<声>が紡ぐ長大な物語。戦乱の世に、ひたすらに「美」を求めて生き抜いた人間の内面が語りつくされます。

けっして読みやすい本ではありません。「美」はなぜこうも心を捉えるのか、「美」に向かってどう生きるのか。どのページの、どの一行にもその問いと3人の煩悶がぎっしりと詰まっていて、とても密度が高いからです。この作品自体がまるでひとつの美術品のように、全体と細部がぴっちりと一致しています。選りすぐられ、研ぎ澄まされた一言一句にも本のメッセージがしっかり宿っていて、受け止める側にも力がいるのです。

丁寧に言葉を味わいながら読んでいけば、この本が読む人の中から呼び起こしてくる数え切れないほどの「美」の姿に圧倒されると思います。この国の春夏秋冬、早朝や夕暮れ、海や山や町、あらゆる所に存在する美しいものの姿や響きが、詩のように豊かで的確な言葉で次々と描きだされ、それが自分の心の中で不思議と像を結ぶのです。ただ活字を追ってきただけなのに、とてもとても美しいものを、たくさんたくさん見たような気持ちにさせてくれる本です。

唯一の難点は、3人のうち2人の<声>の語り口がよく似ていて判別しにくいことでしょうか。