1982年発表作品。井上陽水の80年代の代表作とうたわれるアダルト・オンリーな逸品である。あくまでもシンプルな言葉の羅列で、夜の静寂をぬって繰り広げられる大人の駆け引きや、秘めごとを表現しているのだが、これがお下劣にならないのが陽水の妙。気高さすら生み出しているのだがらスゴイ。頼むから、子どもは聴くな。<7>は後にTVドラマ「ニューヨーク恋物語」(1988年放送)の主題歌となり大ヒットを記録。<2>、<10>は、全詞曲を手掛けた沢田研二のアルバム『Mis cast.』(1982年)からのセルフ・カヴァー。(春野丸緒)
愛の様々な姿を、夜と闇と陽水の深くて艶やかなボーカルで包んだ大人のアルバム
★★★★☆
陽水の中期を代表するアルバム。夜と闇と愛(セクシー)をテーマにした様で、陽水の艶やかなボーカルが一段と光っている。
「とまどうペリカン」は、茫漠とした砂漠を想わせる曲想で、男と女を「ライオンとペリカン」に喩える発想が陽水らしく、男女の愛の儚さ・不確かさを静かに語りかけて来る。「愛されてばかりいると」は逆に、恋愛の最中にいるが故に感じる不安・戸惑いを、夜行列車を想わせる疾走感の中で歌ったもの。陽水の深みのあるボーカルがサウンドにjust fit。「カナリア」は、「カナリア」を連呼する陽水らしい詞で、愛の哀感を巧みに表現した曲。「ラヴ・ショック・ナイト」は、男女の別れの夜をファンキーに歌い上げると言う発想と、陽水の伝法なボーカルが堪らなく良い。「リバーサイド・ホテル」は有名過ぎる曲だが、「ベッドの上で魚になった後」と言う歌詞には、当時流石に新鮮な驚きを覚えた。セクシーな曲である。ちなみに、フレーズの間に、「**製菓」の「チョッコレート、チョッコレート」を入れるとピッタリ嵌るのでも有名になった。「ワカンナイ」は、宮沢賢治流の生き方を「ワカンナイ」と熱唱しているのだが、素直に受け取って良いのか、逆に美学と感じているのか、私にも「ワカンナイ」。「背中まで45分」は、沢田研二にシングルとして提供したセクシーな曲だが、歌謡曲としてヒットするのは難しかった様だ。本アルバムにはピッタリ嵌るのだが。
愛の様々な姿を、夜と闇と陽水の深くて艶やかなボーカルで包んだ様な大人のアルバム。聴けば、不思議な陶酔感に浸れると思う。
併せて『バーボンストリート』のご一読を!
★★★★★
前作でアダルトシュールな楽曲とバナナ仕掛けのサウンドを始動させた陽水氏だったが、今作はその延長線上にありつつも、アルバムとしてのまとまり感では、前作に勝っていると言える。ジェラシーをより歌謡風味にしたてたM1は、一度さったファンをさらに呼び戻し、新しいファンをも獲得した重要曲。そのおかげで、続くM2の本当にシュールな詞も、心地よいメロディーのおかげで生真面目な人でもあまり疑問を持たずに堪能させられるに違いない。M3、8はそれぞれ続く重要曲へのインタールード的役目をうまく果たしている佳曲。さて今回の一番の聞き所はなんといってもM4と9。どちらも深く深く考えさせられ、ドキッとさせられる曲だ。特に宮沢賢治から引用した後者は沢木耕太郎氏のバーボンストリートを読み、この歌が作られる背景を知ってより氏の天才ぶりを知ってほしい。他にはドアが金属のメタルを使用した川沿いにあるM7も準スタンダードナンバーの風格を持った名曲だし、沢田研二へのM10もマリーナ・デル・レイより偏差値が高い。さらに妃殿下を歌ったM5も超1級の名バラードだ。
大好きな曲が満載のアルバム!
★★★★★
後にセルフカバーされている「とまどうペリカン」「カナリア」「ワカンナイ」はもちろん大好き!!
「リバーサイドホテル」はもう何度聴いてもいい!良すぎ!
「ラヴ ショック ナイト」はやさぐれた感じの歌い方がたまらなく好き!
「愛されてばかりいると」も好きだし、艶っぽい雰囲気の「背中まで45分」も好きだし・・・♪
陽水美学の到達点
★★★★★
「スニーカーダンサー」「あやしい夜を待って」らと並び、
売れてないけど充実していた時期の一番の作品。
曲の派手さは前2作に譲りますが、陽水美学の到達点がこのアルバムにはあります。
1.「とまどうペリカン」のピアノのリリカルなイントロから、
その世界に紛れ込んでいきます。
4.「愛されてばかりいると」のイントロのフェイド・インは
その後に訪れる「言葉の洪水」を予感させて、聞くたびにぞくぞくします。
5.「カナリア」は名曲ですね。詞・曲ともに「内に秘めた想い」を
「カナリア」という言葉にのせて聞かせてくれます。
7.「リバーサイド ホテル」はヒット曲。
9.「ワカンナイ」の宮沢賢治がこんなにセクシーに聞こえてしまうのはなぜ?
10.「背中まで45分」は 陽水美学の到達点です。
井上陽水では とっつきやいのでは
★★★★☆
井上陽水は良くも悪くも、独特の世界ですね。初期のころの作品は抽象的過ぎて、初めての人にはとっつきにくいかも。陽水自身も荒削りですしね。この作品ではその抽象世界がこっちによってきてくれる感じがします。逆にこれ以降の作品は、ちょっと売れることを意識した作風になってしまっていますよね。「ライオンとペリカン」は幕末青春グラフィティ ローニン の挿入歌でもあります。「背中まで45分」は沢田研二が歌ってヒットしましたね。