読者の需要によって印象は変わるであろうが、本書は教育学を専攻していない一般の方や、そうでなくても大学1、2年生向けという「入門書」的な域は脱する事が出来ていない。そして、何度も似たような事を繰り返し述べているようにも感じられ、問題とされている事例には似たような要素が絡んでくるのかもしれないが、気になった点ではある。
しかし第Ⅱ部「学校・教師論」は個人的にまとまりが比較的よく感じられたし、参考になる部分は多数あった。広田氏の視点は、とても興味深く共感できる点があるので、もう少しつっこんだ意見がほしい所ではあったが、氏の他の作品に挑戦してみようという気にはさせられた。
教育社会学って,学者がやるジャーナリズムなんだという素人的印象。研究っぽくない。だからといって,「ジャーナリズム」の語に非難はもちろん毀誉褒貶の意図はない。実際,広田はマスコミの報道姿勢を叩いているし,それはきわめて妥当だ。
上司=苅谷剛彦『教育改革の幻想』と口を揃えて,「教育神話の解体」(本書副題)を叫んでおり,巻頭でさっそく苅谷の該当箇所を引用して,「その通りである」(4頁)というあたり,東大教育社会学研究室の息はぴったり。しかし,本書に「再生の試み」はない。「解体と再生」のなかで彷徨ってるという印象。だって,アンソロジーで,「再生の試み」なんかやれるのか? そもそも,「教育神話」を「再生」しうるのであれば,本書の趣旨に反するのではないのか? もっと本格的に「試み」てください。