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教育には何ができないか―教育神話の解体と再生の試み

価格: ¥2,415
カテゴリ: 単行本
ブランド: 春秋社
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教育肥大化に対するアンチテーゼ ★★★☆☆
誰もが教育問題について考えさせられた「ゆとり教育」。そこでは主に責任の所在が「親」か「学校」かで論争となることが多かったように思われる。著者は「地域社会の崩壊」をメインに掲げている。この崩壊してしまったコミュニティを再生しようと試みる人と、崩壊したという前提で行動していく人との間で、また意見は分かれてこようが、地域社会に視点を移すことは重要なことのように思える。
包括的過ぎる。 ★★★☆☆
 本書の題名のような事を述べようとするのならば、一冊では到底覆いきれるような情報量ではないはずである。いくら教育社会学の観点から、問題に対してアプローチを行うと言っても、目次を見ても分かるように教育に関する多くの事(多すぎる事)に目を向けようとしすぎているのではないか。その点で、教育問題に対する広田氏の姿勢には上滑り的な印象を感じた。
 
 逆に、本書でよく引用・参考文献として挙げられている広田氏の『日本人のしつけは衰退したか』(講談社現代新書)は、テーマが絞られており、私としても大変参考になる著作のように思えたが、本作品はあまりにも問題を包括的に扱おうとしすぎているのではないだろうか。

 読者の需要によって印象は変わるであろうが、本書は教育学を専攻していない一般の方や、そうでなくても大学1、2年生向けという「入門書」的な域は脱する事が出来ていない。そして、何度も似たような事を繰り返し述べているようにも感じられ、問題とされている事例には似たような要素が絡んでくるのかもしれないが、気になった点ではある。

 しかし第Ⅱ部「学校・教師論」は個人的にまとまりが比較的よく感じられたし、参考になる部分は多数あった。広田氏の視点は、とても興味深く共感できる点があるので、もう少しつっこんだ意見がほしい所ではあったが、氏の他の作品に挑戦してみようという気にはさせられた。

地に足の付いた教育論 ★★★★★
教育には何ができて,何ができないかを見極めて未来への
提案をしているところが現実的で信頼できました.
「家庭の教育力は低下している」
「青少年は凶悪化している」
「家庭は崩壊へ向かっている」
といったマスコミの洗脳に,データを使って反論しています.
 年少者の凶悪犯罪が起こるたびに教育システムの不備に
結びつけるマスコミの論調に違和感を覚えていたので,
この本を読んで溜飲が下がりました.
教育は人間育成の万能薬ではない ★★★☆☆
素人ながら,デューイのやり方(シカゴ大学付属小学校の試み)は,バートランド・ラッセルと同じでやっぱりアホだと思うけど,もっと育成期における「体験」の意義は,教育を施す過程ではとても重要だと思うけどなぁ。本書の広田には,「体験」「経験」が教育・学習において有する意義についての言及がない。もっと言えば,例えば教員は道徳を教えるのではなく,技術=英語とか数学とかを教えてるのであって,精神や価値観を教え込んでいるのではない。そことの乖離感=隔靴掻痒感は拭えない。

教育社会学って,学者がやるジャーナリズムなんだという素人的印象。研究っぽくない。だからといって,「ジャーナリズム」の語に非難はもちろん毀誉褒貶の意図はない。実際,広田はマスコミの報道姿勢を叩いているし,それはきわめて妥当だ。

上司=苅谷剛彦『教育改革の幻想』と口を揃えて,「教育神話の解体」(本書副題)を叫んでおり,巻頭でさっそく苅谷の該当箇所を引用して,「その通りである」(4頁)というあたり,東大教育社会学研究室の息はぴったり。しかし,本書に「再生の試み」はない。「解体と再生」のなかで彷徨ってるという印象。だって,アンソロジーで,「再生の試み」なんかやれるのか? そもそも,「教育神話」を「再生」しうるのであれば,本書の趣旨に反するのではないのか? もっと本格的に「試み」てください。

私にできること ★★★★☆
 人間の本質は、たとえ時代が変わろうとも、そう大きく変わるものではないと思う。今、巷ではやたらと、犯罪の低年齢化や凶悪化、学力崩壊、家庭や地域の教育力の低下などで大騒ぎをしているが、そのたびに、新しい教育論や政策が打ち出されることに疑問を感じる。この本では、社会の変化やそれに伴う教育および子供や学校の歴史的変遷から、今騒がれている事柄について検証されており、未来の教育像については、あくまで読者にゆだねるとかかれている。私はこれを読んで、マスコミによるゆがめられた情報に振り回されることなく、これからも、親がかつて私にしてくれたように子供たちを育てていきたいと思った。