推理小説よりも面白い
★★★★★
この著者のミステリーは1冊も読んだことはないが、この本は実に面白かった。
私のような2,3日休めば回復する程度の痛みではなく、自殺さえ考えるほどの激烈な痛み。
それを治療するために、大学病院から鍼灸、カイロ、マッサージ、果ては霊媒師までありとあらゆる治療を試みるが直らない。
はたしてその結末やいかに。
実に意外な方法で完治するのだ。
実在の病院名や治療者の名前が書いてあり、治療しても直らなかったというのだから訴えられないだろうかと思う。
心と身体のフシギを強く感じました
★★★★★
有名な小説家、夏樹静子さんが、腰痛の苦しみとそれが治癒するまでの遍歴を、ご本人の日記形式でリアルタイムで描写されています。
最終的には、痛みの原因は以外にも「心理的要因」である事がわかり、ある心理療法家の治療により治っていくのですが、そのスリリングな筆致は苦しまれた当人だからこその迫力がありました。
「治癒した今でも心理的要因だったとは納得できないほどの痛みだった」という症状には、読者もまさに「こわい」と思わされるようなものでした。
抑圧された感情が、身体にブロックをつくる、という概念は、現在アメリカの心身医学界で大きな潮流として認められており、そのような視点で書かれた医療書も、多く見られるようになりました。サーノの「ヒーリング・バックペイン」をはじめ、ピーター・リヴァインの「心と身体をつなぐトラウマセラピー」や、マインドフルネスを提唱した各種の本には、「気づき」による心身両側面の治癒の例が掲載されており、大変興味深いのですが、本書は、稀有な文章力と客観性を持つ作家という職業者が、「患者からの詳細なレポート」をものにされたという点で、大変貴重だと思います。
とにかく、読み物として大変おもしろいので、おすすめしたいです。
腰痛に悩む方はもちろん、心身相関(一体)的なセラピーに興味をお持ちの方も、ぜひ一読されると理解がますかと思います。
腰痛闘病記がとてもわかりやすい。
★★★★☆
さすがに文章がうまいので、引き込まれて最後まで読んでしまった。
夏樹静子の腰痛は、色んな検査をしても、器質的な疾患が明確に
ならなかった。
そこで、考えられるのは、心の病である。
しかし、夏樹静子はそれが納得できなかったので色々と治療を試みる。
この本を読んで、器質的な疾患がなくて、身体に疼痛がある時は、
心の病を疑う必要があるということが、少し理解できた。
腰痛治療行脚からの生還
★★★★★
売れっ子作家が、作家としてのスタイルを変えようと模索する時に、腰痛に苦しみ、広い交友関係を利用し、
ありとあらゆる治療を受け、最終的に心療内科で快方に向かうまでを伝えている。現役の作家自身が
思いもよらぬストレスを抱え、腰痛の治療にかけずりまわり、その地獄から生還するまでを、治る見込みのない
時から書かせた文藝春秋の商魂!も凄まじい。
西洋医学、東洋医学、霊まで出てくる。実名で著者の治療には無力だった名医たちが次々に出てくる。
作家の森村誠一さんも同時進行でおなじ治療を受け、著者とは異なり快方に向かうことも書かれている。
河合隼雄先生へも編集者を介して相談している。著者は、ネアカで、頭の回転が早く、思い込みも
激しい性質と描かれている。早口で治療者と向かい合って行くさまは、サスペンスさながらだ。
最後の最後に「心でこんなに痛くなるはずはない」と否定していた主人公が「心だから無限の痛みを
作ることができる」と、さらにネアカなはずの主人公が抱えていたストレスの存在に『気づく』。
そして、快方に向かって行く。詳細に書かれた本書で追体験することにより、多くの腰痛難民が
救われるのではないかと感じる。
無名の勤務医の立場から
★★★★★
私は民間病院に勤務する、無名の勤務医です。
多方面の検査では異常は見あたらないのに、腰痛や背部痛を訴える方に、頻回に遭遇します。
その痛みは激烈であり、時には痛みの部位が移動したりするのが特徴です。
老若男女を問わず、患者さんの数は非常に多いです。
非常に多い、という事を、特に強調したいです。
私は、本書を読んで、少々もどかしく感じました。
著者は、ご自分に合った治療法に巡り会うまで、随分遠回りをされました。
各界で名医と称される多くの医師や治療者の診療をはじめ、話が「霊」にまで到達しているのには、少々驚きました。
私なら、こういう場合は、心理的側面を重視し、懇意の臨床心理士の先生に、まず相談します。
経験から言って、時間は少しかかりますが、その方向の適した治療法の紹介で、たいていは劇的に症状が改善します。
問題は、この、心理的側面の可能性の問題を、患者さんに説明しても、なかなか信じてくれない事です。
そういう意味で、本書が世間に与えた啓蒙は大きいです。
本書では触れられていませんが、最近は、激烈な腰痛を訴えるニートの若者も激増しているとも感じます。
本書の登場以来「信じてくれる」患者さんが増えました。
信じてくれない方には、本書の一読をお勧めしているのですが、目から鱗だという反応が得られる事も多いです。
こういうケースでは、私の様な、無名の勤務医の言葉は重くはないです。
「劇場のイドラ」かも知れませんが、著者のネームバリューの持つ力は大きいです。
本書は殊の外壮絶です。