本書では、まず、古代から人類がスピリット(森羅万象にひそむ妖怪や神々)と交感するために行ってきた努力が紹介される。アマゾン河流域に住むトゥカノ族は、幻覚性植物の樹液を飲み、スピリットを光のイメージとしてとらえようとした。同様のことが世界中の民族で見られ、アボリジニはそれを「夢の時間」と呼んだ。このような「内部視覚」の体験をつうじて、人類は心の底に「思考の及ばない領域が広がっている」ことを学び、それが超越的な神の世界を想像することにつながっていったのだ、という。
著者は、スピリットたちが徘徊する宇宙から、人間とのあいだに絶対的な距離を保つ唯一神が誕生するまでのプロセスを解きあかしていく。そこから、「一神教の思考法」がつくりだしたシステムが横暴な国家を生みだし、「地球上に単一のグローバル文化」を広げる原因になってきたことが見えてくる。私たちがそれに飲みこまれずに独自の考え方を育むには、いま一度、人類が失ってきた叡智(えいち)とむきあう必要がある、と本書は提案しているのだ。(金子 遊)