朝鮮撤兵〜石田治部少失脚。
★★★★★
正直、派手な事件こそないものの、この巻が今までで一番面白いです。
太閤の死後、慌しく朝鮮派遣軍の撤収を図りそのさ中、一旦政治の空白が生じ、
次の勝馬(家康公)に取入るもの、あくまでも豊臣家=天下人を是とする
石田治部少の一派と水面下での錯綜ぶりが大変興味深いです。
この頃のこと全てが、やがて起こる‘関ヶ原’の遠因になって行きます。
前田大納言とのやり取り、その後の加賀征伐(未遂)の芳春院と高台院の
斡旋の仕方や次代への備えなどの描写は中々のものです。
両巨頭の静かな真剣勝負が感動的な筆致で描かれています。
ただし、石田治部少の描き方は余りにもステレオタイプです。これはどうでしょう?
当然、家康公とはそのビジョンも経験も器も差があるものの、
たかだか20万石弱の身上で‘関ヶ原’に大軍を糾合し
自らの所信を世に問うた偉丈夫と思いますが・・・・・。
石田治部少は佐和山へ退き、来るべき日に備えます。
太閤の死後、既に‘天下人’の認識で事を処する家康公。
信長、秀吉と続く泰平招来へのバトンを手中に収める覚悟をいよいよ決めます。
長い道のりでした。
しかし、まだまだ・・・・、家康公にとってこれからが正念場となります。