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天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫)

価格: ¥578
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: 新潮社
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天人五衰
輪廻転生とは ★★★★★
「生きがいの本質」という本で前世を記憶する人の話があります。
そんなことがあるんでしょうか?
輪廻転生を紹介する話はいろいろあります。
どこに転生するか?いつ転生するか?
魂の旅とは?
自分の思いが強かったところに向かうんでしょうかね?
生まれるとき名前をもらい生きて死ぬ。
そして生まれてまた名前をもらう。
三度目にもらった名前はなんでしょうか?
そしてその意味は?
深い感銘を受けた。 ★★★★★
すべては、「春の雪」の301頁の聡子の科白、

「(前略)、こんなに生きることの有難さを知った以上、それをいつまでも貪るつもりはございません。
どんな夢にもおわりがあり、永遠なものは何もないのに、それを自分の権利と思うのは愚かではございませんか。
私はあの『新しき女』などとはちがいます。
‥‥‥でも、もし永遠があるとすれば、それは今だけなのでございますわ。
‥‥‥本多さんもいつかそれがおわかりになるでしょう」

本多が60年かけても分からなかったことが、
すでに、聡子は知っていたとしか思えない。。。

とすると、一番恐ろしいのは、その聡子にすべてを教え込んだ、
蓼科ではないだろうか、卵を飲みこんだ時のあのおぞましさ!

というのは冗談ですが、
個人的には、なぜか、西遊記を思い出した。
誰にも負けない力を持つ孫悟空と積み上げた論理的思考で世界を知ったかに見えた本多、
慈愛の心をもつ三蔵法師と深い愛を知り磨き上げられた感性をもつ聡子。
唯識論というインドの経典を求めて、人生という旅に出る。
仏の手のひらで踊っていたのは本多ではないのだろうか。
驕れる人も久しからず、
絹江の認識していた世界が、絹江の阿頼耶識によるように、
世界や歴史と認識していたものは、本多の阿頼耶識に過ぎず、
ただ因果が相互同時に起こる永遠たる今があるのみ。
今やすべてを知っていた聡子の言葉で、最後に本多も世界の秘密の鍵の片鱗に触れたのではないか。

大乗仏教が築き上げたこの経典が、本当の世界であろうと、神聖なる詭弁であろうと、
仏門に入らぬ限り、醜く老いて行く。もしくは神道が骨抜きにされ、日本自体が老いて醜くなったと言いたいのか、
三島氏の、文学作品、天皇崇拝、美、精神、その天才、その武士道。
これを、本物、またはその亜種にするために、自決しなければならなかったのではないか。
一読して思いました。かぶり、とんでもない瑕疵あればすいません。長文失礼。
「救いようの無い終わり方」を極めたシリーズ最終巻 ★★★★★
物語の時代背景が現代に近づき、設定が私たちの日常世界に近づくことにより、小説の中における風景は我々の身近なものとなり、シリーズの中で最も親しみやすい小説となった・・かに見えたが、やはり最後まで読むと、作者が読者を挑発し続けている作品であることが解る。

特別な人物として設定され、私たちがそう受け止めてきた主人公の「特別性」が否定され、更に又その存在自体が・・・(読む前の人に結論を教えてはいけませんね)。結局読者は「人間の生に確固たる意味は無い」という引導を渡されてしまう、その引導自体が「衰」なのであろう。

しかし、この救いようのない結末に向けたダイナミックな物語の展開という小説の特色から、高橋和己の小説を想起したのは、私だけなのであろうか。

水平線に船が現れては消えていく・・、その船が私たちの人生そのものを表しているような、その自分の人生を遠い水平線に見ているような錯覚を覚えさせる、強い印象を与える心に残る小説である。
三島の理解者 ★★★★★
三島文学の終着点。
天人五衰の最後はまさに『無』ですね。
三島文学でいちばんすきです。
やっぱり、死を心に決めた人間が書くだけあって、
濃密というか、日常から隔絶された精錬された精神世界を
垣間見させられている気がします。
破綻しているとか、無理があるとかいう意見もあるみたいですけど、
私から見ると、まさに完全に完成してるんじゃないでしょうか?
それはそうと、三島の理解者が現れたらしいですね。
       ↓
三島由紀夫の遺言 観世音
美と醜の対比 ★★★★☆
【豊饒の海】完結編です。
年を重ねる毎に浮き彫りにされていく、本多のリアルな醜さが悲しいです。
それに反して、清顕や勲やジン・ジャンの非現実的な美しさ。
人は死をもってしか、自らの美を完結することができないのでしょうか。

それにしても清顕の自意識は美しかったのに、
透の自意識は非常に浅ましい。
でも彼こそが人間そのものかもしれない。
これで本多も、生涯を通して追い続けた清顕の幻想と、
輪廻転生の輪から解放されたのかな。

三島も何かの幻想を追って生きていたのかな?
市ヶ谷駐屯地での自決によって解放されたのかな?
それは豊饒の海の結末と同じく、闇の中。