日本人として理想の食生活
★★★★☆
作家の水上勉さんは軽井沢に住んで自分の家の回りに畑を作り、旬の作物を手に入れたり、山の中に入って栗を拾ったり、川辺で水芹を採って来て料理をして生活しているらしい。
それが月別に紹介してある。
1月は雪に覆われているため、秋の穀物を貯蔵しておき料理する。ジャガイモなど。
2月は味噌を使った田楽やこんにゃく
3月は高野豆腐湯葉
4月は山菜。タラの芽
5月が筍、うど
6月は梅干
7月は茄子と夏大根
8月は豆腐
9月は松茸、しめじ
10月は果実酒、唐辛子
11月は栗、くるみ
12月は焼き芋、根菜汁
という感じで、季節感があり、またその作物に関する作者の思い出、言い伝え、実際の著利の方法、その味などが本当に丁寧に書かれていて、もう臨場感たっぷり。本当にタラの芽などは、新聞紙に包んで焼いて味噌をつけて食べたくなる…。
今は、スーパーに行けば季節に関係なく何でも買える。ご馳走と言えば、スーパーに走るとか寿司を取るとかを考えがちだが、昔は家の中を探し回ったり、畑や山に行ってその時生っている物を探し出してきて料理して振舞ったわけである。
ご馳走の馳せる、走るという意味はここから来ているらしい。奥が深いし趣がある。
あと茗荷を食べると物忘れをするとか馬鹿になるという言い伝え。この由来なども書かれている。
何より精進料理の本当の意味。
この本は、今の中国問題に右往左往する事など全く関係ない、本当に「土を喰う」という本だ。
今の世の美食についても考えさせられる良書。
本当にご飯が食べられるだけでも感謝という事を忘れずに生活して行きたい。
土を喰う水上氏
★★★★★
貧農の家に生まれた水上氏の作品、殊に自叙伝的性格のある小説や、エッセイなどには、
いつもどこかに、物悲しい郷里や僧院生活の記憶が刻まれていて、読んでいて身に詰まされるような気持ちになることが多い。
しかし本作は、文章のトーンも明るく健康的で、
土をいじり、そこから産まれる作物を、あれこれ調理し、頬張る、
ちょっと典型的な水上勉像とは違う彼の姿が垣間見れる作品。
とは言うものの、面白い一辺倒ではなく、百姓の子水上氏の土に対する思い、現代の商品作物や、現代人の食生活に対する眼差しは、時に辛辣で、多くのことを考えされられる作品でもある。
水上文学ファンのみならず、水上作品に暗いイメージばかりを持っている人にも一読してほしい作品。
食事とは人生の一大事である
★★★★★
他のレビュアーの方と同様 漫画の美味しんぼでこの本を知り すぐ書店で注文し 以来愛読書となっている。
1-12月の各月に 水上が当時住んでいた軽井沢で作った精進料理の話である。まず第一に 読んでいておなかがすいてくる。いわば素人の家庭精進料理の話であるわけだから 豪華絢爛たる内容であるというよりは むしろ 質素な内容であるのだが それでも実に美味しそうである。空腹時に読んでいると たまらない。
それと同時に語られる 仏教を通常低音とした 水上のとつとつとした語りが 実に魅力的である。水上の大きなバックボーンは 幼少の頃の寺住まいだったわけだが それを縦横に かつ 素朴に語るのに聴き入っていると 段々こちらも 厳粛な気持ちにすらなってくる。
その意味で 本書は他の凡百の美食本とは 全く次元の違う一冊である。「食事とは人生の一大事である」という一文には 襟を正すものがある。
日本人の1書
★★★★★
水上勉氏が亡くなられました。
司馬遼太郎氏や井上靖氏が亡くなられた時もとても悲しかったものですが、水上氏の文章が読めなくなるという喪失感も辛いものがあります。
現代の作家の人たちは皆さん頭がよくて上手だと思います。
そして、水上氏は同時代の他の作家に比べても技巧的に優れているとは思えないですが、作品からは技巧を超えた地に足のついた言葉が紡がれていて、なんともいえない朴訥さというか真率さが感じられます。
推理小説も丁寧に書き込まれていますし、絵画もそうですね。
本を読んでそういった気持ちになれる事、そういったものを残した事が水上氏の偉大な功績で、その功績を端的に表しているのが「土を喰う日々」です。
題字からしてよいですね。
文章も暗いところは感じさせないけれど、侘び寂びがあります。
食の随筆としては開高健と並ぶ双璧の一書としてお勧めしたいです。
ここに書かれてあるような、食べ物への感謝、愛情を忘れないで生きていきたいですね。
ご冥福を。
禅を感じる、自然と親しむ。
★★★★★
若いころ、『美味しんぼ』で紹介されていた本書をようやく手に入れた。就農を目指すには、自給自足を現実化するには本書を読むことがやはり必要なのではないか「ヒタヒタ」と感じます。
モノを一つ一つ、大切にする心。それを日本人は思い出すことが必要です。
水上さんは今は病身と新聞で見かけましたが、回復を本当に望みます。
純文芸書店 モダンタイムス
★★★★★
これは食べ物の本ですが、それ以上のものを教えてくれます。それはぜひ読んで確かめてください。
あしのうら堂
★★★☆☆
おっさんの自慢話かと思った。でも、香りの違う味噌をいろいろ使った精進や、焼物は手軽に真似れそうだし旨そうです。
BukuBuku☆マキマキ
★★★★★
インド・カジュラホのGHに置いてあった本。旅の途中で読んだ本の中では白眉。寺の小僧をしていた時にホンモノの精進料理を叩きこまれた著者が、季節毎に土の臭い香る素材を料理していく。いろんなことに食傷気味の方、食べる・の原点を見つめ直せますよ。
雲書房
★★★★★
十六才から十八才までを、禅宗のお寺で過ごした著者が、その信条を忘れることなく守り、土からの恵みをいただく正しい心の持ち様を、素材を皮まで生かしきった調理法と共に教えてくれます。水上流精進料理の十二カ月は、それぞれにまつわる家族の思い出や和尚の言葉、食べさせた客人の反応から、義経の伝説、ゲーテの作品に至るまで興味深いエピソードでいっぱい。カラーでないのが残念ですが、楽し気に作業する著者の写真もなかなか。
はなげ堂
★★★★★
人気コミック「美味しんぼ」の主人公が絶賛していたので読んでみました。食べることと人間の業の深さが淡々と語られている、何回でも読み返したい一冊です。
啄木鳥堂書店
★★★★★
自然にあわせ、野菜と相談しながら料理をする・・。スーパーで軽く野菜を買う日々からすると大変なようだけど幸せなのはどっちかな・・と思いました。小僧さんとして寺に居たときの精進料理の経験、師の教えについても色々と考えさせられました。
どんぶりや
★★★★★
月別に自ら栽培し自ら料理する話が続きます。隠侍(お寺の小坊主(?))を経験した記憶から父の思いでも込めて静かに暮らし食す生活が語られています。女の子よりも男の子向けの料理本みたいな感じですね。
暇人書店
★★★★★
異色のクッキングブック。土を愛し、土と共にすごした1年間をエッセイにしています。筍と若布の炊き合わせは試してみたけど美味しかった。今度は地梨子の果実酒に挑戦してみよう。
トレルボー書店
★★★★☆
これもまた手許に置いておきたい1冊。捨てることない料理の仕方。全てがおいしそうです。 ご飯を一番おいしく食べる方法は、前日の冷や飯に水をかけて、タクアンでいただくのが良いそうです。
やってみたら、本当においしかった!でも、水道水ではどうでしょうか?
だっさい書屋
★★★★☆
土の匂いを感じる一冊。日ごろ忘れがちな季節感を感じることができることができます。材料を慈しみ大切にする心を感じてください。
なごみの本屋
★★★★☆
向田邦子も絶賛していた、料理エッセイの古典。時を経ても変わらない新鮮な感動があります。素材への愛情があふれてるのもいい。