孔明、南蛮王孟獲を七擒七放す
★★★★★
1989年5月15日リリース。『図南の巻(後半)』と『出師の巻』からなる。この巻は多くの死が描かれる。関羽・曹操・張飛・劉備。その各々の死様に最も感じ入る。
ここから主人公は完全に諸葛孔明となる。巻末の地図を見ながら読むと驚くが、五十万の大軍で南下した孔明は驚くような敵と戦っていく。単なる魏・蜀・呉の三国の戦いでない三国志がこの巻の中心部分『出師』にある。そうした孔明の天才ぶりはまさにこの南下に絶頂期を迎え、南蛮王孟獲との戦いにはもう驚かずにはいられないことの連続である。勝っては放ち、勝っては放つ孔明の凄さ。故事『七擒七放』はこの遠征に由来している。
桃園の誓いを思い出す。
★★★★★
7巻は、関羽、張飛、玄徳とあの桃園の誓いが終焉を向かえる。
あの呂布・曹操・袁紹などとの攻防が懐かしい。
この巻は、かなり中身の濃い内容で読みごたえあり。
夢にみた漢朝再興を前に悲劇が・・・
★★★★★
劉備は史上最高の軍容と領地を手に入れたが、桃園の契りを結んだ関羽が呉に討ち取られ、さらに張飛までが、味方に寝首をかかれるという悲劇が・・・
関羽の仇をうつため孔明を連れずに呉をうちに出向いた玄徳は大敗の上に病に没する。
蜀の国にとっては斜陽の道の始まりですが、これを境に主役は完全に孔明となり、孔明を取り巻く歴史の無常を感じながら一気に読みすすんでしまいます。
吉川三国志、終局へ
★★★★☆
三国志演戯における主人公格である、劉備、関羽、張飛の桃園の三兄弟、さらには敵役の曹操までもが、相次いでその激動の生涯を閉じます。スポットライトは、蜀の大軍師諸葛亮と、遂にその姿を見せ始めた魏の将軍司馬懿のライバル対決へと移行し始め、それはすなわち、この長き物語が「終わりの始まり」を迎えたことを意味します。
ハイライトは蜀と呉の決戦「夷陵の戦い」。劉備は、重臣の言に耳を貸さず、敵将を若輩と侮った末、一夜にして大軍勢を炎の中に失う。その様は、かの「赤壁の戦い」の焼き直しを見ているかのよう。劉備はあの時の曹操と同じ轍を踏み、英雄の誉れは若き呉の司令官陸遜が得ることとなります。
際立つのは呉のしたたかぶり。三国の中で最も地味な存在でありながら、赤壁に続く国難を見事に退けてみせます。魏をあれほど苦しめた関羽を、鮮やかな計略をもって仕留めるなど、完全に一人勝ちの様相を呈しています。若干短慮の嫌いがありつつも、最後の一線では誤ることない孫権の堅実ぶりは、劉備、曹操にはない、彼の特色と言えるでしょう。
名優たちの死はあまりにあっけなく、だからこそ逆に胸を締め付けられる想いを抱かせます。関羽は仲間に見捨てられ、張飛は部下に裏切られ、彼らの武勇伝の終幕とするには何ともためらわれる無残な死に様。武人らしい華々しい最期を、と願う後世の読者の希望をよそに、冷酷な戦場の理は矢継ぎ早に彼らを退場させ、吉川三国志はいよいよクライマックスを迎えることになります。
一時代の終焉
★★★★★
三国志を彩ってきた豪傑の曹操や関羽、玄徳などの時代が終わりを迎えてゆく。年齢と共に、玄徳も人柄が変わっていく様が伺われる。しかしながら、魏や蜀はまだ続く。孔明が指揮を執り南蛮を制圧に向かうが、深い知略に富み、彼の凄さが分かる。最終巻がどうなるのか気になるところ。