インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

内なる辺境 (中公文庫)

価格: ¥520
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
Amazon.co.jpで確認
時代は感じさせるが、素晴らしい硬質な文章 ★★★★☆
日本人の作家は、小説が上手い人はいるし、エッセイを書かせたらなかなかやる人もいるけど、どっちも素晴らしいという人はそう多くはないと思う。安部公房さんは、小説が表芸というスタンスは変えなかったけど、どっちもOKという貴重なタイプだったと思う。『砂漠の思想』なんかも素晴らしかった。

 『内なる辺境』は3本の長編エッセイからなっているが、一番よかったのは3本目の「内なる辺境」。ここではユダヤ的なもの、あるいはカフカ的なものに関して書いている。強調されているのは「ユダヤ的なもの」というのは「都市的なもの」と言い換え可能だということ。ユダヤ人が常に迫害されたのは、彼らが自分の「土地」を持たず「本物の国民」にはなりえないからだ、みたいなことが書かれている。

「その、本物という、わずかな皮膜にへだてられて、ユダヤ人、非ユダヤ人とが、あるとき決定的な対立関係に入るのだ」(p.74)というあたりは国民国家の誕生とか、ユダヤの歴史の本格的な研究からすれば、まあ、単純すぎるきらいはあるけど、さすがに本質はついていると思うし、文章の切れ具合は素晴らしい。

安部流評論集 ★★★★☆
この本は三つの評論からなっていて、ミリタリィ・ルック、異端のパスポート、内なる辺境、というふうに続きます。内なる辺境という評論では、カフカがなぜ普遍的な作家となったのかを、ユダヤ人という観点から論じており、いささか偏ったところはありますが、非常に興味深い内容となっています。文学界の異端児、安部公房の筆舌が遺憾なく発揮された作品といえましょう。(100ページの本にしては、いささか高価ではありますが、無理もないでしょう。中公文庫から安部公房の本が消えてしまわないことを切に祈ります。現にドナルドキーンとの共著、「反劇的人間」を本屋さんで見つけることは困難です。)