日本の教育も生き返る!
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本書はOECD国際学力調査において2回連続好成績をマークした、北欧の小国フィンランドの教育システムを紹介、分析した本です。
本書は14人の著者がそれぞれの角度でフィンランドの学力と教育について論じています。ルポタージュ形式で読みやすいものもあれば、教育システムについて深部まで分析した読み応えのあるものもあります。しかし、共通しているのは、フィンランドは共同性を大切にしているということです。子供に競争を強いて劣等感を植えつけるのではなく、共同を大切にして安心感を育み、学びへの意欲を高めていくことが重視されています。
そのほか、問題が起きたときにすばやく対応する行政、現場重視の行政改革、国の経済にとって教育が最大の資源であると位置づけている点など、日本との違いが際立ちます。特にフィンランドが90年代に、現在は首位をマークしている読解力の低下を経験していたことと、フィンランドの教育システムの根底には日本の教育基本法の第3条があることが、とても印象的でした。日本でも本腰を入れて対応すれば、教育の再建は決して不可能ではないと感じました。
本書には方法論はあまり掲載されていないので学力アップの即効薬にはなりませんが、混迷を極めている日本の教育の行く末に一筋の光を投げかける本です。教育基本法の下に現場で奮闘している献身的な教師や教育関係者を、励ます内容だと思います。