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ばるぼら (下) (角川文庫)

価格: ¥540
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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魔性の女 ばるぼら ★★★★☆
ばるぼらはある意味作中で‘悪女’として描かれているが、無邪気で大酒飲みでなんだか憎めないキャラクターである。
一人称も「俺」と、かなり豪快だ。
登場人物の美倉は、三島由紀夫をモデルにしているそうで、その経緯も手塚治虫の人物像がうかがえる。
うーん。 ★☆☆☆☆
手塚のピカレスクは「さるたひこ」像を除けばどれも今ひとつだ。作家の批評眼が問われる故だろう。

ブラックジャックで大学の医局を批判するほどには関心を払わなかった手塚。社会や政治批判に冷淡だったことが、端的にあらわれている作品だ。
悪女を素材にした「人間昆虫記」「奇子」「ばるぼら」…どれも後味が悪い。「MW」や「人間昆虫記」(尻切れトンボに終わるが)は優れた演出家の手にかかれば面白くなりそうな素材ではある。「MW」がマシなのは深読みすれば政治への皮肉があるからだ。

「ばるぼら」では反政府活動に身を捧げ、ばるぼらに去られたために創作できなくなった作家が出てくる。ばるぼらの母は冷然と政治などにうつつを抜かすからだと言い放つ。文脈からして手塚のホンネだ。ちょっと待てよと言う感じ。大いなる力への抵抗も立派な動機ではないか。でなければロシア文学は生まれなかった(罪と罰の漫画化は大島弓子の方が興味深かったのを思い出す)。本気で社会を変えるつもりの無い、デモンストレーションが目的化しているある種の左翼が論外としても、それはそれとして批判すべきだろう。

手塚の悪女が私にはちっとも魅力的でない。ばるぼらはその最たるものだった。
先ず、匂いもしそうなむちむちした女なのに、やたら少年のようだと形容する。これ見よがしにヴェルレーヌを諳んじさせる。ランボーとでも言いたいのか?

出口裕弘の小説「京子変幻」の影響で描いたものではないだろうか。設定がとても似ているのだ。小説は耽美といっていいのだろうが、決してじめじめしてはおらず、軽やかで、香気ある文章だ。併読をお奨めする。


理想の女性 ★★★★★
人間は理想や非現実的なものを(ロマン)を求めるものだと思います。芸術家はそのロマンの部分を形にして、受け手はそれに共感したり、感銘を受けたりする。

ばるぼらは創造者のロマンを引き出す女性で、彼女にあった芸術家・作家は彼女が居ないと創作ができないとまで思ってしまう。酒飲みで放浪癖のある現実的には最悪の女性、でも創造者には最高の女性。なぜか読者としてもばるぼらの魅力に引き込まれてしまいます。

手塚氏も創造者であったため、理想の女性を描いたのでしょうか。邪推かもしれませんが、手塚自身が創作に対するジレンマを感じたときに描いた作品のような気がします。
手塚作品の中でも私小説的な意味を含む作品のような気がします。