女たち
★★★★★
浮気者の夫の元愛人たちが一堂に会し、嫉妬から憐れみに変わった正妻の眼差しにさらされる場面を読んだことがある。マルタン・デュ・ガールと同じフランス人作家の手になる作品であった。この種の男女の組み合わせは珍しくもないということか。
さて、男性がそれぞれなら、女性もまたそうである。『美しい季節Ⅰ』が男性の恋の巻とすれば、『Ⅱ』は女性のそれといった趣だ。夫の不始末を気丈に処理する妻あり、男にもてあそばれる女あり、男をころがす女あり・・・。
中でも際立つ二人の女性のうち、一人は20世紀版シェヘラザード(アラビアンナイトの語り手)で自らを「自由な女」と称し、主要登場人物の男性に大切な感情を教える一方、その身の上話は想像を絶する。
もう一人は過敏で気難しい。だが、その性格設定により、読み手は作家の一層緻密な心理描写と人生を見る眼の深さを味わうことができる。
なお本巻末の「解説」は本巻読了時に読んで構わないと思われる。