過ぎたるは・・・
★★★★★
問答無用を旨とする頑固親父という生き物は、数の変動こそあれ古今東西いるものだ。当巻副題の「少年園」とは、かの頑固親父の名を冠し、外観は刑務所を思わせ、内部で何が行われているかも不明な少年矯正施設である。なべて強制や抑圧は反発のエネルギーを強める結果になるだろう。一方、放任は一見自由なようでだらしなく、哀しい人間をつくるのかもしれない。
さて少年にとって1年は長い。久しぶりに会った旧友の変貌ぶりに驚かされることは珍しくないが、この小説の登場人物たちはどうだろうか。
これら血族、虐待、友情といったテーマ以外にも、恋愛、宗教に至るまで、この巻の守備範囲は広く、見方が特定の人物に偏ることもない。読み手を縛らない懐の深さは作家の持ち味だろう。
なお、当巻の「解説」は当巻読了時に読んで差し支えないと思われる。