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チボー家の人々 (9) (白水Uブックス (46))

価格: ¥1,019
カテゴリ: 新書
ブランド: 白水社
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ノーベル賞作家からの伝言Ⅱ ★★★★★
 半径数メートルの世界での冒険(?)や、難病、記憶喪失といった随分古典的な手法で恋のドラマができるのは、今のこの国の平和気分のせいだろうか。だとすれば、めでたいことだ。
 本巻は主に主人公たちの郷里を舞台とし、開戦一週間前から前日までを描く。そんな時でも人は恋におちる。
 かつて淡い思いを寄せ合った人を置き去りにして、行方をくらませた不器用な者は何度もの偶然に背を押され、ついに恋心を告白する。時代の急流によって恋は凝縮されざるを得ない。彼は自分が活動に捧げる情熱の理由、反戦の思想を伝える。同様に不器用だった彼女は・・・。
 ごつごつとした恋愛を描きながら作家は芸術と思想との関係を思ったであろう。葛藤の片鱗が友とのやり取りに出ているように思う。いつも彼を思いやってくれるこの友が兵役に戻っていく場面は、その永遠の「片思い」を象徴して忘れ難い。
 さて、もう一方の主人公の周囲はごく一般的フランス国民だが、さすがに戦争に無関心ではいられなくなっている。主戦派、反戦派侃侃諤諤の中で、「宣戦は一般投票で決める」という主張は興味深い。一方、外交官である患者の「3日で世論は思うまま」という打ち明け話には身も凍る。それは、歴史が証明したからである。
 なお、本巻「解説」には重大な「先取り」があるのでご用心を。