例えばこんな作品について語っている。神山征二郎「群上一揆」現実の百姓の姿をこれまでに無く忠実に描いている。そしてそのためか「七人の侍」のような民衆の支持を得られなかった。また、任侠映画は実は江戸時代百姓町人が持っていた自由と自治の名残なのだ、となかなか面白い考察。「無法松の一生」は古くからある伝統的な恋の物語なのだというのは誤解で、「シェーン」などに見られる西洋騎士道の貴婦人崇拝理念の移し替えなのである。日中双方が認めあう日中戦争の映画は今までほとんど無かったが、「チンパオ」(中田新一監督)でやっとつくられたその意義。ドキュメンタリーであるが、意図しない演技が感動的な「ファザーレス/父なき時代」。「群上一揆」と「チンパオ」は有名ではないが、私が最近の傑作だと思っていた作品なので取り上げられていて特に嬉しかった。
最近東西の戦争映画を立て続けに見た。「地獄の黙示緑完全版」「キプールの記憶」「カンダハール」「ブラックホーク・ダウン」現実と寓意の間を揺れ動いたり、ヘタウマの長廻しで現実的な戦争の姿を装おってみたり、ドラマとドキュメントのあいのこみたいな作品をつくってみたり、近視眼的な現実を延々と写すことで返って現実が分からなくなる作品だったり、戦争映画は優れて「現実と美化の間を揺れ動く」作品なのだと思い知った次第です。