入門書。
★★★★☆
総ページ数269ページという限られた紙面で100年の歴史を均等に描いている為、コンパクトに映画史の概略を知りたいという人には最適の本だと思います。
出てくる固有名詞はトーマス・エジソン、リュミエール兄弟、D.W.グリフィス、リリアン・ギッシュ、メアリー・ピックフォード、グロリア・スワンソン、ジョーン・フォンテイン、キャサリン・ヘップバーン、エリザベス・テイラー、マリリン・モンロー…等々、ハリウッド映画好きなら知っていて当然というレベルの、それぞれの時代を代表する人たちばかりですが、これらの名前について知らなくて、どの時代にどういう映画が作られていた頃活躍した人達なのかなど知りたいという欲求がある人にはとてもよい本だと思いました。
映画関係の仕事を目指している人達だけではなく、趣味として映画が好きという人も、もっと深く映画を楽しめる手助けになると思います。
ともかくも概略は分かる
★★★★☆
1963年に生まれ、ニューヨーク大学大学院に学んだ映画研究者が、2001年に刊行した、一般向けに「ともかくもハリウッドまるごとを語って」みた本。19世紀末に庶民の見世物文化の中で形を成し始めた映画は、20世紀初頭に物語を語る装置となった。第一次世界大戦は米国を世界一の映画大国に押し上げ、それと共にハリウッドも米国映画制作の中心地となっていく。1920年代には映画界の垂直統合が発展し、映画の格上げが図られ、制作も現場主義的な監督主導からシナリオに基づくプロデューサー主導へと転換した。過当競争の中でトーキーを導入した直後、30年代には映画界を大恐慌が襲い、またプロダクション・コードが強化される中で、ハリウッドは黄金時代を迎え、40年代には物語の複層化と技巧の前景化が見られた。しかし第二次世界大戦後、垂直統合への法規制、郊外化とテレビの普及を背景に、独立系による制作とハリウッドによる配給という分業が成立し、パッケージ型制作とワイドスクリーンが普及する。60〜70年代の経営危機の後、ハリウッドはコングロマリット化を推進してテレビとの共存体制を構築し、二次・三次利用を見込んだ大規模宣伝と一斉公開という戦術で映画を売り出した。こうしたハイ・コンセプト映画の興隆の中で、レイティング・システム導入という追い風を受けて、スター監督や映画小僧が活躍し、映像のスペクタクル化、物語の断片化、キャラの突き出し、ジャンルの混合が進行した。80年代には女性・アフリカ系監督の台頭、作家とファンの解読・引用合戦や、ビデオ・タイアップ商品・テーマパークをも巻き込んだメガコングロマリット化=娯楽企業間の相互関連会社化も見られ、ハリウッドは新たな繁栄の時代を迎えている。個々の映画の分析がやや抽象的であり、今後の展望も不明瞭だが、全体の概略は押さえられる本。
質量ともに薄い
★☆☆☆☆
本書の欠点は以下の4点。
(1)オリジナリティがない。類書の引き写しが多い。
(2)著者独自の映画分析がないので、映画論として薄味。
(3)所詮、新書判という制約のなかで質量ともに薄い。
(4)著者がハリウッド映画そのものを良く見ていないので映画に対する愛情がない。
本書で満足できる読者は相当知的水準が低い。中学生レベルか。
まとまりの高い良書。学生はもちろん社会人にも!
★★★★★
資料の出所はともかく、とにかくハリウッドという映画産業の町の百年の全体像を1冊の新書でわかるようにしようとした良書。新書としての完成度は高い。我々に直接に見える作品よりも、その作品が作られてくる背景としての、映画会社相互の、また社会との壮絶な格闘史に光を当て、まさにハリウッドの百年の歴史となっている。
逆に言うと、あくまでハリウッド映画会社の百年史であって、ハリウッド映画作品の百年史ではないので、作品解説的なものを期待している人は間違えないように。そういう人には、井上一馬『アメリカ映画の大教科書』(新潮選書)1998 の方がお勧め。もちろん、この新書を読んだ人も、合わせて読むと良いよ。
それにしても、百年から先、ハリウッドはボロボロだなぁ。この著者に、ハリウッドのその後の産業的迷走、つまり、夢の後、についても、ぜひ整理してまとめてほしいなぁ。
読んだら映画が見たくなりました
★★★★★
正直言ってハリウッド映画って付く作品にはなんとなく抵抗が…というか娯楽大作ばっかりだろ!と単純に思ってたんですが、この本を読んでちょっと見方が変わりました。
映画ってただ人気狙いに作られてるんじゃなくて、いろんな背景とか歴史があって、一つの作品ができていたんだなぁと。
読んだらもっとちゃんと映画が見てみたくなったし、もっとちゃんと映画のことを勉強してみたくなりました。