Zeppelinにトチ狂うハードロック少年だった私が、ふと色気を出し、ジャズ喫茶に足を踏み入れたのが、カルチャーショックとの遭遇だった。　アルティックのでかいスピーカーから溢れる洪水に呑まれ、溺れた。　世界は広い。

　今良いと言われている音が、10年後にもそうかというと、ダサいとか時代遅れとかいわれたりする事が多いが、このアルバムはそういったファッション的なものを超越している。　プレイヤーが皆、挑戦者のような初々しさもあり、貪欲に音楽と向きあっているからだ。　また、時代がこういったものを求めていた事もあり、見事に当時のファンを魅了した。　これを生で見れた人が羨ましい。　とにかく、基本テクをここまでハイテクに、ここまでハイセンスに仕上げたガットは神と崇めるに相応しい。　　スティーブカーンはここではぶつけ本番的なプレイに終わっている。時間が無かったのだろうか。アリスタオールスターズの時は水を得た魚なのだが。　　ブレッカーとサンボーンの掛け合いはかっこ良過ぎ。　　マイニエリは若いときからそのセンス溢れるフレーズに定評があると思うが、管楽器を演奏しているかのようなブレス（溜め）部分を設けることで、冷たいイメージのヴァイブを熱く演奏できるのだろう。　彼等は特有の演奏法なりスタイルを持つ。それは王貞治やイチローと共通したものがある。　突き詰めた人はやっぱりどこか違う。　

この後彼等は先駆となって名作を作り出して行く。　しかしフュージョンが下火になっていったのは、彼等売れっ子が消化すべき仕事が増え、革新的なことをやろうとする時間に恵まれなかった事も一因ではないかと思う。

７８年、日本にて行なわれたライブを収録したアルバムです。
何といっても、メンツが凄い。ブレッカーブラザース、デヴィッドサンボーンのホーン隊に、スティーブガッド、アンソニージャクソンのリズム隊、ｇにスティーブカーン、ｋｅｙに深町純、リチャードティー。今となっては、集まったことが奇跡とも言えるメンツ。
曲も、後々、彼らのアルバムにも収録される人気曲が目白押しなのですが、これぞニューヨークのフュージョンというべきサウンドになっています。演奏でいえば、スティーブガッドのプレイが、素晴らしいのは確かですが、マイニエリのｖｉｂも秀逸です。
少し寂しいのは、タイトルになっている深町純の存在感が薄いことですが、ｋｅｙの役割、これだけのメンツの中ということを考えると仕方ないですかね。
フュージョンの最高傑作かどうかは、別にして、フュージョンを語る上で、はずせないアルバムであることは確か。