ただ、この書で書かれていることは、あくまでもアメリカを中心とした海外の事情が殆どである。これをそのまま日本に持ち込んで同じ事がいえるのか、というと疑問が残る。
アメリカと日本の新聞の最大の違いは、日本では各新聞社の下に、独占的な契約を結んでいる販売店が無数に存在し、そこから宅配という形の売り方が主流という点である。駅売りのような形の販売が主流のアメリカでは、紙媒体がなくなっても販売方法の変化、という形で新聞社が生き残るであろうが、日本でそれを行う際には、この販売店による宅配制度が最大のネックとなる。販売店による宅配制度、というものは紙の新聞あってこそのものである。アメリカと同じような事をしようとすれば、当然、全国に無数にある販売店が反発することだろう。そうなると、アメリカと同じような事が行えるのだろうか? 日本の大手新聞社へのインタビューなどでも一切、その点には触れられていなかったのが残念である。
興味深い点が多かったのは事実だが、それをそのまま日本に適応できるか、という点に付いては疑問である。
ただ、テレビが一家に一台となった時点で本当は企業努力が起きる必要があったんだと思う。でもそうなる事は無かった。
これでネットが無かったとしても新聞が衰退する事は決まってたんじゃないでしょうか。
結局キャッチセールスやら押しかけ訪問販売と同様の方法でしか販売部数を維持出来ず、内容の向上や価格を下げる努力を怠っている新聞業界に未来は無いんだと思う。
実際新聞のイメージは下がり続けてるし、新聞は何十万の羽毛布団やらよくわからない壷やらと同じレベルの「被害にあって手元に残った商品」と同じようにしか捉えられてない。
俺はこの点を新聞業界が自覚していない状態でこの本の内容のような事を提案しても完全に無駄としか言えないんだと思う。
少なくとも20年以内に新聞業界は完全消滅する。生活に不必要な物との認識が広まった時に新聞業界も消え去るだろう。
基本的な論点は4つ。
1.従来情報の受け手側だった一般人が容易に情報を発信できるようになった。
2.受け手側のメディアリテラシーの高まりによって、受け手側が積極的に情報発信者の選別を行うことになる。
3.その能力の高まりによって、既存メディアに広告を出稿していた企業は、より効果的な媒体であるインターネットへ比重を移すだろう。
4.広告主の動向の変化によって、大部分の収入を広告に頼っていた既存のメディアは統廃合が進むだろう。
論じている点はすでに潮流となって現れているが、今後既存のメディアでその流れに対応できないメディア(会社)は消えていくと結論づけている。
そして、米国の新聞社の幹部が新聞社はあっても、新聞「紙」が必要とされるかどうかに懐疑的な考えをしていることが印象的だった。