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峠 (中巻) (新潮文庫)

価格: ¥780
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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峠をこえるために ★★★★★
人間万事、いざ行動しようとすれば、
相容れぬ原則が前後左右に矛盾として取り囲んでくる。
この場合の判断は容易にできぬ。
大は天下のことから、小は嫁姑の事に至るまで、全てこの矛盾に満ちている。
その矛盾に、即決対処できる人間になるのがおれの学問の道だ。
即決対処できるには、己の原則を創り出さねばならない。
その原則さえあれば、原則に照らして矛盾の解決ができる。


色恋もまた、俺を練磨する道だ。
惚れるということとは違う。どことなく対決の匂いがある。
鉄が鉄を打って火花を飛び散らせるような、
または、剣客が他の剣客と見えることによって、自分の道業を深めようとするような。
おぬしとおれは生命の付き合いだ。惚れてはいない。
思想をもった一個の霊が、生命を所有している。
生命は道具である。道具が好いている間は問題ない。
道具同士の付き合いにすぎぬ。
惚れると、道具の持ち主の霊までが戦慄する。
霊まで戦慄してしまえば、志は消し飛んでしまう。


京と、東の方では発想習慣が違う。
京では、口と頭が無連絡である。心にもなくても会話だけが独立している。
会話だけで社交が成立し、多くの場合は本音ではない。
会話は相手との情緒を和らげるためにのみ存在する。
が、京より東の方では、常にその会話は本音である。
常に正気で言い、その会話は常に論理的であった。


継ノ助は、生涯で最も充実した日々でございましたと答えた。
世辞ではなかった。が、方谷は忙しくて、継ノ助の相手になったことはなかった。
ただ、継ノ助は観察した。
ひたすらに方谷を観察し続けた。
その観察が充実しきったものだった、と継ノ助は言ったのである。


事を行うとき何よりも知るということが大事だ。
大政奉還という様子が明らかになった時、その機をとらえて、やる。
徳川家や牧野家が滅びるか生きるかのときだから、
どんな手術や苦い薬も人は甘受する。
政治とは機をみることだ。


古来、天変地異は運命につき凶か吉かの予告をするという。
悪いことの起きる兆しなものか。そういう馬鹿なことはない。
天象が、地上の政治を支配するとは思っていない。
太陽には、太陽そのものの事情があって緑色になったのであろう。


兵馬の精強なくして、一藩の正義なく、独立なく、自尊なし。
武力が充実していてこそ、言うべきことが言え、相手の理不尽を抑えることができ、
正義を吐くこともできる。
武力がなければ、ならず者に踏みいられて、震え上がっている婦女子も同然である。


人はその長ずるところをもって全ての物事を解釈してはいけない。
必ずことを誤る。その長ずるところが使えないために、
心が鬱屈し、使おうとして、時勢観察まで自分に都合よく曲げ、
都合の悪い材料には目をつぶり、
ひたすらにそれを使おうとする。


この男にとって何よりも嫌いなものは涙であった。
涙という、どちらかといえば自己の感情に甘ったれたもので、
難事が解決できたことは古来ない。
一藩を宰領してゆくのは、涙ではない。乾ききった理性である。





主人公に苛々する中巻 ★★☆☆☆
上巻では自由に動き回っていた河井が権力を持った途端、藩内の自由を奪い始め苛ついてしまった。上巻はだらだらしていたが中巻に入ると動きがでてきてそれなりに読める。だけど歴史を少し知ってるためか河井の行動が独りよがりに思えてしまう。封建制度がダメになることは河井だけがわかっていたことではない、わかっていた者の多くは後世に名を残したが、河井はほとんど無名だ。下巻で河井はどう動いたのか?
人間のねうち ★★★★☆
河井と福沢の人物対比がおもしろい。
「自由」福沢と藩を背負っている「家老」河井、
考えは同じようで、取る行動、
取らざるを得ない行動はまったく異なったものとなる。
どう死ぬのか、夫々が尊い。
政治って・・ ★★★★★
上巻で諸国を旅してきた継之助。この巻では長岡藩の重職に抜擢され、事実上藩を動かしていく様が描かれている。外様吟味と言う地方官から始まり、家老にまでなってゆく。
泰平の世であれば継之助が家老になると言う事はなかっただろうが、時勢がそうさせた。筆者の言葉である。重職についても継之助の基本は揺るがない。あくまでも長岡藩のため、そのためだけに風を読み、動く。福沢諭吉との出会いのシーンがあるが、同じような時代の流れを感じていながら継之助は長岡藩士としての立場以上でものを言わない。考えないようにしていると言っているから、彼自身ももっと別の場所でやれると思っていたかもしれない。
読み進むとやはり、彼ほどの目があれば藩を出ても活躍でき、もしかしたら歴史の第1線に名を残せたのではないのか、とすら思えてきて歯がゆさを感じる場面がつづく。遠くから鳥瞰図を見るようにして時代を見ているからこんな風に思うのだ、と言うことは十分わかっているのだが。
この巻での継之助は、政治家としての手腕をあちこちで見せている。政治というのはこういう事かと何だか妙に納得してしまった。継之助の理論では武装することイコール戦うためではないことが良くわかる。一歩間違うととても怖いが、これもありかと思わせる。

混乱の中で大義名分に生きる ★★★★★
 大政奉還の混乱の中で、譜代藩の藩士とし、徳川家の大義のために生きてゆく河井継之助、しかし一方で将来の混乱を予想し、武装中立化へとすすんでゆく継之助。
 藩とは、家とは、さむらいとは何かを問う作品