作者が語りかけてくること
★★★★★
一端完結したかと思われたメアリー・ノートンの「小人の冒険シリーズ」が、20年を超える時間を経過した後書き継がれました。
その理由は解りませんが、この作品から考えてみるしかないでしょう。
父親ポッドが娘のアリエッティに語って聞かせます。
「借り暮らしやは、それなしには生きられんものだけを借りるんだ。・・・貪欲のためでもない。それに怠けるためでもない。」
又、今回初登場のピーグリーンがアリエッティに語ります。
「本当にぼくたち安全かねえ?いつまでも?」
これらに見られる様に、今までと違って、作者の考え方を強く前面に出しているように思います。
人間が、自然界の秩序を乱し環境問題を引き起こしてまでも、自らの「欲」を満たして行こうとする現代人への警告と言っても良いのかも知れません。
そして、そんな人間たちの将来への危惧が、この作品を書かせたのかも知れません。
いずれにしても、作品は「完結編」に相応しい出来栄えです。
今まで語りきれなかった部分を網羅しそれぞれに決着を付けて、物語を「完結」させています。
そして、そこには主人公アリエッティの成長ぶりも窺い知ることが出来ます。
見事なシリーズ最終巻です。
人間中心主義再考
★★★★☆
「小人シリーズ」の最終巻です。
アリエッティたちは教会・牧師館を
「借り暮らし」の拠点にします。
しかし、ここでも貪欲なプラター夫妻の手が入り、
小人たちはあわやの危機に陥りますが、
教会の鐘に救われ、「小人シリーズ」は幕を閉じます。
当時の英国社会の「負」の部分を描きたかったのかどうか分かりませんが、
貪欲なプラター夫妻を「悪い人間」の象徴として描くあまり、
二人が村八分に近い扱いを受けていることです。
下手をすれば、「悪者」は理由なくこらしめてもよいという単純な発想が
はびこりかねないと私は懸念します。
小人シリーズ第4巻『空をとぶ小人たち』から約20年後に、
本書は執筆されました。
『新しい家』においては、人間はいかに生きるべきかに関する
メアリー・ノートンのより成熟した思考が映し出されています。
大騒動が起きて大きなアクションが展開することはなく、
シリーズの中では静的であり、瞑想的ですらあります。
今回、アリエッティとみす・メンチスとの
対面および対話は全くありませんでした。
小人たちを見世物にして一儲けしようとするなどの
他の存在を思いやらない人間の残酷さを反省しない限りは、
小人の人間に対する恐怖心は消えず、
人間と小人との真の交流はありえないということです。
現代に当てはめてみれば、目先の利益のために自然環境を破壊する
人間の強欲について人間は直視し自省しなければ、
人間と人間以外の生物との共存は不可能だと突きつけているかのようです。
人間中心主義のあり方に再考を促す一冊です。
評価について
★★☆☆☆
品物は、注文後、3日目に届きました。
残念なのは、送料が450円もかかった事です。
それと、商品の発送後に、メールで連絡がありました。
発送の予定でも、知らせてもらえれば、良かったと思います。
商品そのものには、問題はありませんでした。