ショスタコ・ファンにはありがたい1冊
★★★★☆
著者はショスタコーヴィチのウェブサイトをやっているとのことだが、その類のものに疎い評者には本書はありがたい。
伝記部分など先行研究を踏まえた記述は堅実であり、作品解説も妥当なものだろう。
音盤紹介では、著者自身の好みが出るのは当然であり、そのことで論ってみても詮無いことだ。
著者はまた、ローレル・ファーイ著『ショスタコーヴィチ』の固有名詞チェックを担当していたということであり、本書でも索引と巻末資料が有用だ。ショスタコ・ファンなら持っていてよいものであり、推薦盤はあれこれと私的なベスト盤と較べる愉しみがあって星4つは十分。
大して売れもしない(失礼)手間隙のかかるこんな本が1,900円で買えるのだから、ほとんど感嘆するしかないではないか。
まあマニアほど、本書への評点は辛くなるかもしれないが。伝記部分、作品成立の経緯等については、本書の参考資料にも出ている千葉潤『ショスタコーヴィチ』(音楽之友社)が一層詳しく、便利だ。
全くの失望
★★☆☆☆
著者の Shostakovich の web site は長年楽しませて貰っているが,あれを本にするとこうまで面白くなくなるのか,信じられない思いがする.著者の熱意は分かるが,例えば弦四重奏曲で私が最高だと思う第12番がこうも小物扱いされ,推薦CDが皆こうも古いとなると問題だと思う.交響曲の評価にしても,Soviet 時代の演奏に高いウェイトを置く余り,大局的見地を失っているとしか考えられない.参考文献としては非常に危険な書である.
基本資料として最適
★★★★★
前書きで断っているように筆者は専門家でなく、しかも既存の資料をまとめているだけのものなのだが、実に良くまとまっており、基本資料として最適ではないかと思う。
出典を示す注も丁寧に付いており、安心して読める。
作品解説には、推薦盤もついており、大変参考になる。