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虚空遍歴 (上巻) (新潮文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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山本周五郎とは ★★★★★
芸術にしろ文学にしろ、「我とはなんぞや」との求道を経験した方はこの主人公沖也が
きっと他人とは思えないでしょう。

あれこれ、独りよがりと言えば独りよがりですが、「沖也ぶしの浄瑠璃」をあくまで
完成させるべく、傷つき、ぶつかり、あるいは個性豊かな登場人物との間で、
触発を受けながらひたすらに求道を続け、彷徨います。

ラストが、こうとは思わずに読み進んできて驚いたのですが、これはスチーブン・フォスター
の自伝が下敷きにあった事を知り納得をしたしだいで、読後感もこのラストにかかわらず、
爽やかに感じるのはなぜかなと思いました。

浄瑠璃や端唄など当時の娯楽背景がふんだんに登場しますが、それは筋の中で
「こういうものである」とこちらにわからせるようにされていますので、時代物になかなか手が
伸びない方へもオススメです。
守勢は創業より難し ★★★★★
浄瑠璃ですとか、常磐津ですとかまったく趣味のない私で始まりには多少の戸惑いを感じましたが、どんどん物語りに引き込まれてしまいました。『実際に苦労をしてみろ。生きた生活を体験しろ。』身にしみます。勇気付けられます。冲也はいかに。下巻につづく。
同情はするが共感はできない主人公 ★★★★★
 昨年、齢30を目前にして山本周五郎氏の作品に初めて触れました。
 長編をいくつか読みましたが、ほぼ全ての主人公に共通する“信念を貫かんとする生き様”には、毎回イライラさせられています。
そして、私の中でそのイライラの頂点に君臨している主人公が、本作の中藤冲也です。
 
 自らが望まぬ名声を捨て己の道を極めんと悪戦苦闘する冲也には、成功者特有の贅沢な悩みと己の才能への自惚れを感じました。
正直に言って、そんな冲也に対して同情はするものの共感はできませんでした。
 が、そんな冲也がこの物語の中でどのような体験を経て、何に気づき、どこに到達するのか?
という感じで、気がつけば他の著作同様、本作にもどっぷり引き込まれてしまいました。

 なお下巻の冲也には上巻以上にイライラさせられましたが、物語としては納得のラストだったと思います。
おけいがいればこそ....冲也の壮絶さは、成り立つというか... ★★★★★
虚空遍歴は自分の芸術=一生をかけた仕事をやり抜くためにとことん身を削っていく男の悲劇というか、生き様のお話である、簡単に言えば。ただそれだけだったら、意固地で独りよがりで気むずかしいだけの変人の七転八倒紀であり、とてもやりきれない。我々が救われるのは時に独白を交えてストーリーに広がりと一般性の着地させてくれる「おけい」の存在があるからだ。おけいは男と女の状を全く抜きに冲也に尽くしまくる。それは冲也ぶしの完成という芸術に奉仕する心からなのだが、現実にはこんな人物は存在しないだろう。解説の奥野健男氏はこの二人を周五郎本人の芸術へ切り刻んでいく綿(冲也)と世間と折り合いをつけていこうとする面(おけい)の投影と位置づけているが、その通りだと思う。「酒みずく」というエッセイを読むと、まさしくあらゆる自作の精査につきあたり自信も粉々になりあえぎながら創作に向かう冲也的周五郎がかいま見えるのだが.....我々が好ましく、読み重ねていくのはやはり「おけい」的周五郎が照れ笑いして、まぁ読んでみ、とつぶやいているからに他ならない....虚空遍歴はある意味で創作者山本周五郎の心臓をさらけ出したような迫力ある一編である。
たかがでもあり、されどでもあり。 ★★★★★
人間は、それぞれの精神世界の虚空を彷徨って生きていくしかないのだと、以前から思っていたことを他人の言葉で聞かされたようで、ガツンと来ました。現実的に何を成し遂げるかということももちろん大事なのですが、独自の虚空(=精神)を、いかに深く豊かにしていけるかということ、また、人生に何を求めるかということの重要さを、改めて考えさせられました。
山本周五郎さんの他の作品とは、作中に流れている空気間が全く違います。読み終った後、タイトルの意味深さにも驚きました。