ドロリとしてのもが感じられない
★★★★☆
全身の皮をはがされた死体が発見された。全身が傷づけられているにもかかわらず、脳だけは
無傷という状況に、「第九」が黙っているはずがない。彼らの捜査線上に浮上したのは、5年前
に起きたある失踪事件と、そこで秘密を抱え込んだ当時受験生の若者たちだったのだが・・・。
清水玲子はやたらと死体を描く、しかも猟奇的な仕方で殺された死体を。それはもちろん、スト
ーリーに沿っているわけで、闇雲にというわけではないのだが、そのような死体を描く彼女を
支配しているのは「殺人を描くこと」、というよりも人体に対する純粋な好奇心のような気がし
てならない。その「人間の体ってどうなってるんだろう?」という興味は、彼女のサイエンス
フィクションの全般を覆っているものだ。
今回だと、彼女の興味は皮にあると感じた。僕たちは、まさに人の皮をかぶった動物である。
その皮と一緒になって初めて、「人格」や「愛着」と言ったそのたもろもろが想起されるの
だけれど、それを剥がせばそこにあるのは、グ ロテスクな筋肉と骨と臓物の集積、ただそれ
だけである。清水はそのような「人体の零度」に 強い興味を引かれているのではないか。
繊細な描線のせいか、彼女の描くそういった死体たちは無機質に見え、生物独特のあのドロリ
とした有機的なグロテスクさがあまりない。それだけにそこに暴力性や残虐性、リアリティー
はないのだけれど、その「リアリティーのなさ」がまた、彼女の興味が殺人という「それ自体
にはない」ということを言い表しているようでならない。
切なさに流されない重さ
★★★★☆
今回は過去の事件と現在の事件の被害者がそれぞれ加害者となる展開で、
追い詰める者と追い詰められる者の狂気に読んでいるこちらも自然と
息を潜めてしまった。作中に出て来る死体よりも、自分の罪を隠すため
他の犯罪を黙殺する当事者達の惨たらしさと浅ましさが印象に残る。
そしてまた過去の被害者も、自分の秘密を守るために過去の加害者と
同じ破滅の道を辿っていくやり切れなさ。
容赦の無い行き詰る展開の中、青木の犯人についた嘘に胸が詰まった。
ラストも感傷に流されない重さで色々と考えさせられる。
★がひとつマイナスなのは、重厚なドラマの中で一番のキーワードに
なる部分にどうしても違和感があるため。あの極限状況と年齢で麻酔も
無しにあの部分を切除された場合、ショック性失血死になるのでは。
それではドラマが成り立たないというご都合主義が垣間見えたため、
この評価にさせていただいた。
読めない人もいるだろう
★★★★☆
1巻から4巻までアマゾンで購入。全巻揃っている書店がみつからなかったので。
かなりハードな内容なので、全登場人物のバランスの整った端正な顔立ち・スタイルが救いです。読み終わった後は、外出先でフッと異常者に危害を加えられるのではないかと
身震いしました。危機感を日ごろ持ち続けることは困難ですが
アメリカの異常な犯罪に追従するようになってきた日本の現実は、やはり直視しなければ
ならないでしょうね。
星一つ減らしたのは夢でうなされたことと、未発達な子どものいる家庭の場合、子どもの目から遠ざけなければならない描写がある漫画だということ。
そして、性犯罪者のキャラクター作りに障害のある社会的弱者を持ってきたことが引っかかりました。(社会派漫画である故に)
怖がりの友人に、サスペンスホラー漫画を貸して、その感想をきくのが楽しみな私ですが
今回に限っては良心が痛むので、貸す楽しみがないという点から、この点数とさせてもらいます。
近未来&ミステリー&サイコサスペンスの融合
★★★★☆
時代は死者の脳から記憶を取り出して映像化できる技術を持った近未来。
毎回、無残な殺人事件があり、被害者の記憶映像から犯人、事件の核心に迫っていく。
連続殺人、猟奇殺人の場合のみ、脳の取り出しが許可されるという点でサイコサスペンス。
1巻初回のみ、場所と設定が異なるが、基本は日本の「公安9課」みたいなところが事件を扱っていく。毎回の事件の中で、登場人物たちの過去が現在の事件と絡み合いながら次第に明らかになっていく。深刻な場面と設定が多いが、適度なユーモアもあり、楽しめた。
絵がきれいなことで、残酷な死体場面等が汚くならず、思ったより気持ち悪くない。
何より、脳を取り出すということの是非、その人のプライバシーを暴き立てることについての倫理観、葛藤が物語に深みを与えている。
無常観と残虐と愛(笑
★★★★★
死後、脳みそをスキャンして、事件を解決するというと、
見もふたもないのですが(笑
死人にくちなしというけど、死人の見た映像だけ再現できるという設定です。
絵も綺麗だし、ストーリーも、なかなか凝ってます。
定価で読んでも損はないコミックでした。
そこはかとない、無常観と残虐が漂っていて、なんともいえない雰囲気ですよ。