ありそうな世界?
★★★★☆
キャラメルの箱が電話になったり ヤドカリが見つめてきたり… 普通に考えて有り得ない事なんですが 江國さんの紡ぎ出す言葉で もしかしたら…て気になる というか 入り込んでしまいました。 夏の暑い日に、カーテンを閉めてクーラー効かせて読みふけり、読み終わると気分はすっかり栞に…(笑) しかし江國作品には、 ちょっと冷めてて俗世間から浮いてる印象を受ける人がたくさん出てきますよね〜。
現実と不思議なファンタジーが織りなす物語
★★★★★
読み終わって、なんだかしばらくぼーっとしてしまう物語でした。
最初、なんでもない日常のひとこまから話が始まって、読み進めていくうちに、これは普通じゃない話なんだと気付いてからは、もう次の展開が楽しみで仕方なくなり、一気に読んでしまいました。
登場人物は、主人公以外皆とても個性的な人たちで、特に主人公の兄は現実感のない不思議な設定でした。
この物語の鍵を握る「やどかり」が、まるで人間そのものだったのが、奇妙で面白かったです。
後半、兄や兄の妻、そして主人公が順番に泊まるホテルが、異空間につながっていたのが、とても不思議でますます物語に引き込まれていきました。
まさにファンタジーそのものです。
途中、主人公の行動が歯がゆくて、また話の展開が読めなくてドキドキしましたが、最後はまあハッピーエンドという感じで終わりましたので、ほっとしました。
「あー面白かった!」というのが、私の感想です。
大好きです。この作品から江國香織が好きになりました。
★★★★★
まず情景が目に浮かぶ作品。明快でシリアスな恋愛小説が好きな人には不向きかもしれません。幻想的なのに、妙にリアルな主人公の感情が息づいている。主人公の全く普通だけどやり切れない日常にふっと入り込んだ非日常。若い女性なら共感出来ると思います。
江國らしくない?ふしぎ小説
★★★☆☆
ふしぎな物語です。
“家出”した”やどかり”をめぐって(そして周りを取り巻くヘンな人たちをめぐって)ふしぎなふしぎなお話が続きます。
最初は江國さんらしい「ちょっとだけズレた」世界が広がっていましたが、途中からはそのズレがどんどん大きくなっていき、最後は完全に別世界に連れて行かれてしまいました。
村上春樹的とでもいうんでしょうか、完全にこっちの世界とは手を切って、独自に作り上げたシュールな時間・空間の中で物語が展開していきます。
メタファーだらけの仮想世界。
暗黙の世界秩序と価値観、時間空間認識。
う〜ん。
いや、こういうのも嫌いじゃないんですが・・・どうもしっくりこなかったんですよね。
だって全く江國らしくないんだもん。
江國さんって、「こちら側」と「あちら側」の境界線ギリギリあたりを、すました顔で「日常」として描く力が卓越していると思うんですよ。
だから完全に「あちら側」に行ってしまうと、江國さんの一番の魅力が失われてしまっている気がして、ちょっと違和感があるんですよね。
まだ彼女の作品を全部読んだわけではないので、もしかすると江國さんにはまた別の魅力が眠っている(僕が気づいていないだけ)かもしれませんが、今の段階ではやや受け入れがたい作品でした。
奇怪な世界と夏の匂い
★★★★☆
人気女性作家は、皆「恋愛小説の名手」と扱われる傾向があるようだ。江國香織もだ。しかし、一部の指摘通り必ずしもそうではない。江國香織の小説は「普通の恋愛小説」では全くない場合が多い。
本作は1995年の長編小説。私が読んだのは99年の文庫版。これも「普通の恋愛小説」などではない。女性と男性、特に女性の問題は主要なテーマである。しかし、全体的には一種異様な幻想小説。いささか病的とすらいっていい。彼女のそうした側面が強く出た作品だ。
要約は簡単には不可能。主人公の女性は二十歳のフリーター。だが、周囲の設定は奇怪。どこか病的な兄は、結婚しているが愛人もおり、更に重婚の可能性まで出てくる。そのまわりの、また不思議な子供達ややどかりら。文庫版では、詩人・作家の三木卓が、本作への接し方を丁寧に説明している。文庫版で解説と共に読む方がいいかもしれない。
本作に強く感じるのは、タイトル通り、夏独特の匂いが、ストーリーよりもむしろ前面に浮かび上がってくること。夏の陽射しや空気。集合住宅や商店、街路。そうした空気が前景化してくる。著者は、詩にも強い関心をもっている。そういう感覚的な面や叙景の力を強く感じる。