それからヘレニズム時代にギリシア語の発音は大きく変化し、母音の長短の区別は失われます。なので、いちいち母音の長短を記せという下の評者のようなコメントはナンセンスと言わざるを得ません。
この著作は,戦術面,遠征ルートにおいて記事が充実しています。それゆえに,アレクサンドロスの遠征で実際どのような戦いがあったのか,よく解ります。特に,グラニコス,イッソス,ガウガメラの戦いについては,布陣のし方や,戦闘の推移が詳細が忠実に書かれています。もちろん,テュロス攻防戦などの主要な戦いも記述は詳細かつ正確です。
また,遠征途中の兵士達の入植の様子や,部下との衝突なども書かれていて,戦闘以外の面でも遠征についてよりいっそう理解できるでしょう。
なお,上巻では,遠征の始まりから,ペルシャ帝国崩壊,インドの最果てに着くまでの記述がかれています。おそらく,アレクサンドロスの遠征が壮大のものであり,アレクサンドロスが後に英雄化されたのか実感できる一冊です。
関心のある方は是非とも本書をお読みになることをお奨め致します。 ただ欲を云えば、ギリシア語の母音の長短を明示して頂きたかったと思います。
次回は、クルティウス・ルーフスのアレクサンドロス伝の邦訳を心より期待して居ります。