喪に服す
★★★☆☆
『黒衣の女王 グイン・サーガ126』です。
グインサーガ最終巻です。作者生前に刊行された巻としては、ですが。
この巻の舞台はパロ。イシュトヴァーンがクリスタルパレスに乗り込んで来て、リンダやヴァレリウスと駆け引きする、という内容です。
それ以上はネタバレになるので言いようも無いですし、これだけ言ってしまえば全てネタバレしてしまったと言っても過言ではないのですが。
過去の追憶とか、アル・ディーンの思惑とかといった要素もあるといえばあります。
細かい点で一つ気になったのが、イシュトが国を出発する時点でサイロンの黒死病は大変なことになっていたはずなのに、イシュトがパロに着いてから、ヴァレリウスがサイロンの情勢を初めて知った、ということになっています。魔道師情報網、伝達速度が遅すぎでは?
この巻に関しては、ヒキは、ここ最近の巻と比べたらややおとなしめだったように思います。
その分次巻以降での中身に期待したいです。絶筆となるまで、どこまで話が進んでいたのか、を。
生前刊行最終巻ではありますが、グインサーガシリーズはもうちょっとだけ続くのじゃ、ということで、評価の★3は、あくまでも第126巻単体の評価です。
まずはご冥福をお祈りします
★★☆☆☆
まずはご冥福をお祈りします。
残念ながらこの巻も今まで通りのグダグダ展開です。
ドンドン飛ばしながら読んでも内容は理解できます。
読後に何も残りませんね・・・
今となっては、ですが無駄な展開を省けばストーリーも破綻せず
完結できていたであろうにと思うとものすごく残念です。
まあここまで惰性で読んできたので最終巻まで付き合いますが
万が一新規参入を考えているならばグインが黒竜将軍になる所までなら個人的にはお勧めします。
大部分はもっと前のノスフェラス編までという意見が大半ですが。
物語の行く末
★★★☆☆
読んでいる途中に著者の訃報を知りました。
この巻を含めて大胆な展開は鳴りをひそめていただけに、
今後の展開をどう描いていたのか気になります。
伏線が多いだけに想像が膨らみます。
ぜひどなたかに引き継いでもらいたいものです。
広がり続けて
★★★★★
巻を追うごとに、物語は収束するどころかどんどん広がり続け、とうとう未完になってしまいました。
ものすごく残念な気持ちと、やっぱりそうなったかという気持ちと半々です。
訃報を聞いて約2週間ほど経ちました。
栗本薫さんはグインの世界に旅立ってしまったんだと思えてなりません。
もっともっとこの世界を綴りたかったことでしょう。ご冥福をお祈りいたします。
「サイロンで黒死病」という話が出ていたので、久しぶりに外伝1「七人の魔導師」を読み返しました。
少々ちぐはぐなところはあるものの、約25年前に書かれたものと感じられないほど、本編にうまくはまることに感動しました。
「ああ、そういうことだったのか。」と。
お時間のある方、そちらも読んでみてください。
グインサーガをもっと読みたい
★★★★★
26日天寿を全うされた栗本薫さん。
彼女のグインサーガは、彼女が知っているグインのいる世界を小説に書き起こしたものでした。
そこには、貧しいものから支配者層まで立場も宗教も人種も違うありとあらゆる人の想い、悲しみ、苦しみ、愛、そして死が描かれました。人が、1つの出来事にいかに翻弄されるか、同じ出来事も立場が変わるだけで状況も全く変わるし、時間がたてば立場が逆転することもある、といろんな角度から切り取って描いてくれました。
私は、グインサーガから政治や経済の発展の仕方も教わりました。
地理的な環境から国のなりたちが決まるので、地域性ができ、独特の国民性ができ、経済の状況が決まるということ。
そして国を統べる統治者は自国と他国の状況を把握して対応を決めるのだが、何にこだわったかで国の進み方が変わり、国家滅亡の道も簡単にありえること。
彼女の溢れる知識から生まれるグインサーガの世界のバラエティーに富んだ世界は、
まさに人生の学びと、
人間への愛に満ちていました。
この物語が彼女の絶筆である130巻で終わってしまうのは
本当に苦しいことですが、
たくさんのことを教えてくれたグインサーガに感謝しています。
126巻はリンダの心のうちを描いています。
女王としては若すぎ、キレイ過ぎ、活発すぎる彼女の心、生々しいですね。
栗本氏の描写はどんな登場人物にも繊細で、その人の人生をいたわっている様です。
そんな人々の作り上げた国もいとおしく、興味深いのでしょう。
国土や、建物、風物を描く細かさにそれが現れています。
普通の日常、それが限りなく大切に思われるようになった最近の文章には
そんな気持ちが現れているように思います。
グインサーガは単なる小説ではなく、
人間と時代を描いた群像小説だと思います。
栗本薫さん、どうもありがとうございます。
素晴らしい作品を世に出して下さったこと感謝いたします。