フッセル現象学のエッセンスを網羅
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前著「世界の思想家」シリーズで読んでいたのだが、友人に貸して帰らぬ本となったので、再購入。(本を貸す馬鹿、借りる馬鹿という迷言のとおり)本書は現象学を完成し得なかったフッセルの原著全集フッセリアーナから書き抜かれた諸概念を日本語に訳して、編まれた重要概念要約集ともいうべき1冊。フッセルは数学を専攻してから、独自に現象学を創始した関係から、概念規定が厳密だが、溢れだす思考を書きとめるために自ら速記を習得してノートをとった天才。だが現象学全貌や大系を残していないために、後続の研究者は諸概念を整理して大系を推測するしかない。こうした作業の手がかりとしては、思弁なのが専門家による抜粋を読むことが最善。今ではフッセリアーナのオンライン版もあるが、研究者が作成した抜粋やアンソロジーは、その品質においてオンライン版を超える。その観点で本書はフッセル現象学のエッセンスを網羅しており、至便。精確なドイツ語使いでもある編者の功績は大きい。