モスクワ攻防戦 (山崎雅弘 戦史ノート)
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1941年6月22日、ドイツ軍は300万人の兵力で対ソ侵攻「バルバロッサ作戦」を開始した。戦略的奇襲の成功により、ソ連赤軍は緒戦で大打撃を被り、ドイツ軍首脳部は前年の対仏戦と同様の輝かしい勝利を確信した。しかし、最初の3か月で100万人を超えるソ連兵を戦死または捕虜という形で赤軍から奪い取り、1万両(ドイツ軍が対ソ侵攻開始時に保有していた戦車台数の約3倍)のソ連軍戦車および装甲車輛を破壊または捕獲しても、ソ連政府はフランスとは異なり、戦争の前途に絶望して和平を乞うようなそぶりは一切見せなかった。
これは、ソ連赤軍に壊滅的な打撃を与えれば、それで戦争は終わるとの認識で対ソ戦を開始したヒトラーとドイツ軍首脳部にとって、重大な計算違いだった。ソ連赤軍は、無尽蔵とも思われる人的資源を活用して、広大な領土の奥地から新手の兵士を前線に送り込み続けた。そして、対ソ戦をどのような形で終わらせるかという基本的な計画を、根本から練り直すことを迫られたヒトラーとドイツ軍首脳部は、唯一残された勝利の可能性に賭けることを決断した。ソ連邦の首都モスクワに対する直接攻撃である。
本書は、1941年9月30日から1942年1月10日までの、独ソ両軍によるモスクワ攻防戦の顛末を、コンパクトにまとめた記事です。2008年8月、著者(山崎雅弘)の発行する歴史シミュレーション・ゲーム雑誌『シックス・アングルズ』第11号の巻頭記事として、A4版10ページで発表されました。当時両軍が抱えていた戦略・作戦・戦術上の諸問題を整理し、戦役全体の流れをわかりやすく解説しています。