中国・台湾紛争史 (山崎雅弘 戦史ノート)
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中国と台湾。総面積約九五〇万平方キロメートルの巨大なる国家・中国と、面積約三万五〇〇〇平方キロメートルの台湾は、第二次大戦の終結以後の六〇年間に、宿命的とも言える政治的対立と軍事的衝突を幾度となく繰り返しながら、今日に至っている。
一九四六年から四九年に中国全土で繰り広げられた、国民党と共産党の内戦(国共内戦)に敗北した国民党の残存勢力が、海を越えて台湾へと逃げ込んだことが原因となり、台湾は望まずして、中国人同士の政治的闘争の渦中へと投げ込まれた。この日以降、中国の共産党政府と台湾の国民党政府は共に、我こそが全中国の正当な政府であると主張し、台湾の領土は島民の意志とは無関係に「中国」の版図へと組み込まれていったのである。
こうした共産党と国民党の対決姿勢は、両者の間に位置する台湾海峡を挟んで、必然的に大小の軍事紛争を引き起こす結果となった。その中でも、とりわけ大規模な軍事力の行使が行われたのが、東西冷戦の対立構造が東アジアでも形成されつつあった一九四〇年代後半と、一九五〇年代の前半・後半の計三度にわたって繰り広げられた「金門島攻防戦」である。
金門島とは、台湾海峡の大陸側に位置する小さな島で、蒋介石に率いられた国民党側はここに頑強な要塞を構築して、大陸への捲土重来のための地歩として死守する方針を固めていた。しかし、毛沢東の率いる共産党側は、最終的な政治的目標としての「台湾侵攻」を念頭に置きつつも、それとは異なる性質の「特殊な政治的意図」を隠し持ちながら、この小島に対する情け容赦のない軍事行動を展開することになる。
それでは、三度にわたる金門島攻防戦は、いかなる理由で引き起こされたのか。毛沢東と蒋介石は、この戦いで何を得ようとしたのか。
本書は、中国・台湾双方の視点から中台紛争の発端と経過を読み解き、現代中国の行動原理を物語る事例をコンパクトにまとめた記事です。2005年5月、学研パブリッシングの雑誌『歴史群像』第71号(2005年6月号)の第3特集記事として、B5版15ページで発表されました。単なる「領有権の主張」とは本質的に異なる、中国の台湾に対する特殊な政治的思惑と、それによって生じた不可解とも言える紛争の構図を、わかりやすく解説しています。