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ヴィシー・フランス (山崎雅弘 戦史ノート)

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: 六角堂出版
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ヴィシー・フランス政府とは、第二次世界大戦中の1940年7月11日から1944年8月25日までの約4年間、欧州の大国フランスに出現した、親ドイツ的な中立政府の通称である。

1940年5月から6月にかけて、ドイツ軍の電撃的な侵攻により歴史的な敗北を喫したフランスは、同年6月22日にドイツと休戦条約を締結し、パリを含む国土の三分の二をドイツの軍政統治下に委ね、残る南東部と海外植民地を領土とする形で、独立国としての主権を辛くも保持した。そして、後者の首都として、パリの南約300キロに位置する温泉保養地ヴィシーにフランスの新政府が樹立され、第一次大戦の英雄として国民の間で絶大な人気を博したフィリップ・ペタン元帥が、初代の国家主席に選出された。

ヴィシー政府とその初代元首ペタンは、第二次大戦の終結後は長らく「邪悪なナチに迎合した裏切り者」として語られることが少なくなかった。その後、戦後のフランス社会で主流を占めた、シャルル・ド=ゴールをはじめとする親連合国の軍人や反独レジスタンスの闘士たちが次々とこの世を去ると、それまでのように連合国・レジスタンス中心の視点で「裏切り者」のヴィシー政府を一方的に断罪するのではなく、当時のフランスが直面していた社会的状況を冷静に振り返ろうという気運が、フランス国内で芽生え始めた。

それでは、ヴィシー政府とはいつ、どのような経緯で誕生し、大戦中にはいかなる目標を掲げて政策を推進したのか。彼らはなぜ、敵であったはずのドイツと手を結び、それまで同盟国であったイギリスと敵対する道を選んだのか。そして、第二次大戦期のフランスにおいて、ヴィシー政府が果たした役割や存在意義とは、何だったのだろうか。

本書は、第二次世界大戦期にフランスという国家が直面した存亡の危機に真っ向から立ち向かい、身を引き裂かれるような苦悩や精神的重圧と戦いながら、己の人生を賭けて国を指導したペタン元帥とヴィシー政府の足跡を、コンパクトにまとめた記事です。2009年3月、学研パブリッシングの雑誌『歴史群像』第94号(2009年4月号)の記事として、B5版16ページで発表されました。日本では紹介されることの少ないヴィシー政府の活動とその時代背景を、多面的かつわかりやすく解説しています。