でもそんなマチルダにも嫌なことはあった。まず第一にテレビばかり見ていて子どもはほったらかしの両親。次にマッチョで凶暴な女校長ザ・トランチブルだ。この校長は元ハンマー投げのチャンピオン。気に入らない生徒は次々と投げ飛ばす人間ブルドーザーみたいな怪物なのだ。でも幸いマチルダには彼ら大人に立ち向かえる天賦の才能があった。驚くべき知性と聖人のような忍耐力、そして根っからの仕返し好きな性格である。
まず両親がつらくあたったら罰するという日々のゲームでウォームアップ。だが仕返しの本番は、大好きな担任のハニー先生をいじめる悪魔のようなトランチブルが相手だ。天才少女マチルダの勝利は目に見えている。それでもなお、このおはなしには次に何が起きるかまったくわからない魅力がある。マチルダが自分の「じつに奇妙な、えもいわれぬ感覚」に気づいたときに起きるどんでん返しとは…?
ロアルド・ダールは創意に富んだ筋運びで最後まで読者を飽きさせないが、その一方で子どもの無垢な気持ちに耳を傾けることも忘れていない。マチルダがみんなから好かれる本当の理由、それは数々の才能もさることながら、彼女が本当に思いやりのある少女だからなのだ。